連載 医事法の扉 内科編・2
善管注意義務(2)
福永 篤志
1
,
松川 英彦
2
,
稲葉 一人
3
1国家公務員共済組合連合会 立川病院脳神経外科
2国家公務員共済組合連合会 立川病院内科
3中京大学法科大学院
pp.312-313
発行日 2011年2月10日
Published Date 2011/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402105037
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今回も善管注意義務について検討します.薬物の副作用に関する具体的事例をみてみましょう.
まず,18歳の精神発達遅滞状態の男性に対し,フェノバルビタール(フェノバール®),カルバマゼピン(テグレトール®)などの向精神薬を投与した例です.1カ月ほどで顔面,手足から体全身に発赤・発疹が広がったため,まずテグレトールを中止し,その26日後にフェノバールを中止しましたが,結局,フェノバールによるStevens-Johnson症候群のため視覚障害の後遺症が残存しました.高裁は原告の請求を棄却しましたが,最高裁は,担当医は「十分な経過観察を行い,過敏症状又は皮膚症状の軽快が認められないときは,本件薬剤の投与を中止して経過を観察するなど,本件症候群の発生を予見,回避すべき義務を負っていた」とし,結局,原審において担当医の過失の有無の判断に誤りがあったとして原判決を破棄し,原審に差し戻しました(平成14年11月8日判決).この「本件症候群の発生を予見,回避すべき義務」が善管注意義務の1つとなります.ちなみに,この事案は,平成16年に高裁で和解が成立したといわれています.
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