特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第8集
血液生化学検査
蛋白
α2-マクログロブリン
伊藤 喜久
1
1旭川医科大学臨床検査医学
pp.129-130
発行日 2010年10月30日
Published Date 2010/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402104712
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異常値の出るメカニズムと臨床的意義
α2-マクログロブリン(α2-M)は分子量が800,000,糖含量6~7%の蛋白質で,補体C3,C4,C5などと構造的に相同性を有する.肝細胞の単球マクロファージ系細胞,星状グリア細胞など全身の細胞から産生される.α2-Mの機能はトリプシン,アンチトリプシン,エステラーゼなどの蛋白分解酵素と結合し,血中から短時間に酵素活性を阻害する.血液凝固についても同様に制御作用を示し,トリプシン,トロンビンを抑制しフィブリノゲン分解,線溶を促進する.また,ホルモン,インターロイキン6(IL-6)とも結合し,その機能を調整する(図1).
血清濃度は産生とクリアランスのバランスの上に立つ.腎糸球体基底膜の選択的透過性が維持されている限り,尿中にはほとんど漏出しない.しかし,ネフローゼ症候群ではα2-M,リポ蛋白など高分子蛋白も含め,すべての蛋白が尿として体外に漏出する.この結果,体内での代償的産生が高まり,また中・低分子蛋白成分と比較して相対的に漏出しにくいため,血中濃度は増加する.妊娠では血中エストロゲンが増加すると,単球マクロファージ系の細胞からの産生も増加する.
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