特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第8集
血液生化学検査
蛋白
α1-アンチトリプシン,α1-アンチキモトリプシン
〆谷 直人
1
1国際医療福祉大学熱海病院検査部
pp.126-128
発行日 2010年10月30日
Published Date 2010/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402104711
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異常値の出るメカニズムと臨床的意義
急性期蛋白の一種であるα1-アンチトリプシン(α1-antitrypsin:α1AT)およびα1-アンチキモトリプシン(α1-antichymotrypsin:α1ACT)は,蛋白分解酵素を阻害する蛋白(protease inhibitor)に属する.α1ATはエラスターゼ,トリプシン,キモトリプシン,コラゲナーゼなど各種のプロテアーゼの作用を中和ないし阻害する.α1ACTはキモトリプシンやカテプシンGを中和し,PSA(prostate-specific antigen:前立腺特異抗原)と結合する特徴がある.
血清蛋白分画のα1分画の主成分を占めるα1ATはマクロファージから産生されるインターロイキン-1,インターロイキン-6や腫瘍壊死因子などの炎症性サイトカインの作用で主に肝臓で生成され,炎症時には2~3日で基準値の約2倍に達し,炎症の指標となる.α1ACTもα1分画に属し,血液中に存在するのは主にα1ATと同じ機序で肝臓で生成されたものであるが,老人斑と脳血管アミロイドにα1ACTの存在することが明らかにされており1),脳のアミロイド生成にもα1ACTは関与している.このため,Alzheimer型認知症では血清および髄液中のα1ACTが増加する.
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