特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第7集
血液生化学検査
蛋白
α2-マクログロブリン(α2-M)
伊藤 喜久
1
1旭川医科大学臨床検査医学
pp.136-137
発行日 2005年11月30日
Published Date 2005/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402101750
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α2-マクログロブリン(α2-M)は分子量800,000Da,糖含有量6~7%の蛋白量で,補体第3成分(C3),C4,C5などと相同性を有する.肝細胞,単球マクロファージ系細胞,星状グリア細胞など全身の種々の細胞で産生されている.α2-Mの機能はトリプシン,アンチキモトリプシン,エラスターゼ,トロンビンなどの蛋白分解酵素と結合して複合体を形成し,血中から短時間のうちに除去し,酵素機能の不活性化に作用し,さらに血液凝固線溶の制御作用にかかわる.また,ホルモン,インターロイキン-6(IL-6)などとも結合,その機能を調節する役割も狙う(図1).α2-Mはラットなどの動物種では急性相反応物質で,組織の破壊,感染症などでは短時間に濃度の増加がみられるが,ヒトではこのような変化はほとんどみられない.
異常値の出るメカニズムと臨床的意義
臨床評価は血中濃度(質量濃度)の動態変化による.濃度増加は産生増加,クリアランスの低下が,一方,低下は産生低下,クリアランスの増加による(表1).ネフローゼ症候群では体外にすべての蛋白成分が漏出する.この結果,代償的に産生が亢進し,分子量の大きいα2-M,IgMなどは相対的に漏出されにくいため,これらの機序により血中濃度は増加する.
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