特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第7集
内分泌学的検査
その他のホルモン
ANP/BNP(心房性ナトリウム利尿ペプチド/脳性ナトリウム利尿ペプチド)
大石 充
1
,
荻原 俊男
1
1大阪大学医学部老年・腎臓内科学
pp.354-355
発行日 2005年11月30日
Published Date 2005/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402101829
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異常値の出るメカニズムと臨床的意義
ナトリウム利尿ペプチドは体内に備わるホルモンで,心臓や血管,体液量の恒常性維持に重要な役割を担っており,タイプA,タイプB,タイプCの3種類が知られている.
心房性ナトリウム利尿ペプチド(atrial natriuretic peptide:ANP)は,アミノ酸28個からなるホルモンで,主に心房で合成,貯蔵され血中に分泌される1).また,ANPは腎臓に働き利尿を促進すると同時に,末梢血管を拡張し,血圧降下作用物質としても働く.また,心房以外に心室や中枢神経系にも存在している.ANPは生理的には心房筋内に存在し,心房の伸展によって分泌が規定されている.静脈還流に伴う心房の伸展に応じて分泌されるが,心筋肥大を伴う重症心不全では心室筋からも分泌される.心不全では循環血液量が増えたり,心収縮力が低下したりして心房圧が上昇し,ANPの分泌が増加する.また,通常はほとんど存在しない心室筋でもANPが合成され始める.ANPシステムの障害が高血圧の発症,浮腫性疾患を引き起こす可能性が高く,血中ANPの測定は浮腫を伴う疾患の診断,特に心機能,腎機能障害の診断および重症度の判定,血液透析における体液量の管理に有用である.その分泌は心房圧による心房筋の伸展により刺激されることから,ANPが高値を呈する場合,心房負荷や循環血漿量増加をきたす病態の存在が示唆される.実際,心不全患者の心内圧とANP濃度は極めてよく相関することが知られている.また,慢性腎不全患者における透析実施に伴うANP濃度の低下は除水量を反映し,至適体重(dry weight)の設定に際して一つの指標となる.
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