特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第7集
内分泌学的検査
甲状腺・副甲状腺
T4(サイロキシン)/free T4(FT4),T3(トリヨードサイロニン)/free T3(FT3)
池田 斉
1
1埼玉医科大学総合医療センター中央検査部
pp.324-325
発行日 2005年11月30日
Published Date 2005/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402101816
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現在,甲状腺ホルモンとしてはサイロキシン(thyroxine:T4),トリヨードサイロニン(triiodothyronine:T3)を測定する必要性はほとんどなく,FT3,FT4の測定のみで十分である.その理由は,T4,T3の総ホルモンは,甲状腺ホルモン結合蛋白(TBGなど)の増加,減少によって,甲状腺機能に異常はなくても,高値や低値を呈する[例えば,妊娠ではTBGの増加のためT4は増加する(図2)]が,一方,FT4,FT3はその影響を受けないため,よりよい甲状腺機能マーカーとなる.そして,現在では,酵素免疫測定法(EIA)や化学発光免疫測定法(CLIA)など非放射性免疫測定法を用いたキットにより,正確で迅速なFT4,FT3の測定が可能になったからである.本稿では,そのような現状を踏まえてFT4,FT3を中心に記述する.
異常値の出るメカニズムと臨床的意義
FT4,FT3が増加する機序には主として2つある.第1は,Basedow病のように甲状腺内部でホルモン合成が増加する場合である.Basedow病は甲状腺の甲状腺刺激ホルモン(TSH)レセプターに対する自己抗体(抗TSHレセプター抗体:TRAb)によりホルモン合成が促進される.第2は,無痛性甲状腺炎や亜急性甲状腺炎のように,甲状腺組織が破壊されて,ホルモンが血中に漏出するためFT4,FT3が上昇する場合である.その他,稀なメカニズムとして,Plummer病(機能性甲状腺結節による甲状腺機能亢進症),TSH産生下垂体腺腫(TSH過剰分泌),下垂体性甲状腺ホルモン不応症(下垂体のT3受容体異常)などがある.
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