今月の主題 甲状腺疾患のすべて
甲状腺ホルモンをめぐって
サイロキシンとトリヨードサイロニン
稲田 満夫
1
1天理よろづ相談所病院・内分泌内科
pp.1316-1317
発行日 1975年8月10日
Published Date 1975/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206157
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1926年,甲状腺の有効成分として,サイロキシン(T4)が単離されて以来,甲状腺内には,種々のヨウ素化合物の存在が明らかにされた.これらの甲状腺内ヨウ素化合物のうち,ホルモン作用のみとめられるのは,T4と3,5,3'-l-トリヨードサイロニン(T3)である.T4の血中濃度正常値はほぼ10μg/100ml程度で,以前よりその測定は臨床的に応用されてきた.一方,T3の測定は最近ようやく可能となり,その血中濃度はT4の1〜2%で,T3に関する知見が多数報告されている1〜3).
T4およびT3の骨格は,図1こ示すようにサイロニンであり,この分子へヨウ素がつく位置と数により,物理化学的,生物学的性質が異なってくる.T4は3,5,3',5'の位置にヨウ素が結合した3,5,3',5'テトラヨードサイロニンであり,T3は3,5,3'の位置にヨウ素が結合している.これらは,いずれも天然のものは左旋性である.
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