現代の環境問題・26
室内汚染—室内環境とアレルギー
松田 良夫
1
Yoshio MATSUDA
1
1(財)兵庫県予防医学協会
pp.418-421
発行日 1992年6月15日
Published Date 1992/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900593
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1.はじめに
真菌(約5,950属,約64,200種)による生活への危害は住環境の汚染,食品の変敗だけでなく,健康障害をももたらす.室内微生物汚染の有害性については各分野で多角的に検討されているが,その生態は複雑多岐にわたっており,その実態が把握されていないので的確な汚染防止対策が施されていないのが現状であろう.日本の住宅形態は気候風土に適した木造住宅から鉄筋コンクリート住宅に建築様式が変遷した.その住環境はあらゆる面で整備,改善され生活様式も一変し,快適な生活環境になった.その反面,暖房器具,加湿器具などによる室内温湿度の上昇から室内に非定常あるいは定常結露を発生させ,その結果,室内に存在している真菌の生育,増殖を促進している.
室内の真菌について屋内性のダニと共にその挙動に注意せねばならないのは,アレルギー性疾患の病因的抗原として,真菌症の感染源として,また食品衛生上重要視されるマイコトキシンによる危害防止の面からも,生活環境における生態の解析が必要だからである.真菌はその多様な性状を環境に順応させながら存在しているが,いつも生育活性状態ではない.生育に不適な環境では静菌状態で,長期間にわたって細胞形態を萎縮し生存している.
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