特集 気道アレルギー
鼻アレルギー—室内塵アレルギー
林 鷹治
1
1広島大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.745-755
発行日 1973年10月20日
Published Date 1973/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492207973
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Ⅰ.室内塵と気道症状
塵りや埃りが気道症状の原因と成つていると聞かされれば,奇妙に感ずるのがむしろ当然であろう。そこで,まず冒頭にもつとも理解され易い一般的事実を挙げ室内塵と気道アレルギー症状の因果関係についての理解を深めたいと思う。体質的に正常な人が室内塵を気道に入れても,軽い鼻内異和感か掻痒感あるいは喉頭部異和感を覚えるが,それ以上の鼻症状や気管支症状発現はなく,胡椒を鼻に吸わせてくしゃみを起こしても,それは間もなく鎮まり他の症状を伴うことはない。しかし,気道にアレルギー症状を持つ患者では,蔵に入るとくしゃみが連発し鼻がつまる,大掃除の日から当分鼻の具合が悪い,古本屋に行くと眼と鼻がかゆくなる,母親が掃除を始めると子供が鼻水を出す,通気孔の下にいると鼻がつまる,誤まつて掃除機の塵り袋を吸つて喘息の発作が起きた,などの経験を訴える。これらは,室内塵と気道アレルギー症状の直接関係を意味するもので,このような事実に無頓着な患者にはこの関係をよく説明しておくことが大切であり,いきなり皮内反応の発赤を以て「あなたのアレルギーの原因はゴミです」と伝えるのはかえつて不信を抱かせ正しい病歴を得たり治療への理解や協力を計るのが困難となる。また,鼻アレルギー発作は朝方によく起こるが,室内に飛散している塵粉が夜中から朝方には室の下層に淀みその濃度が増していることも理由の1つであろうし,転居によつて鼻症状や気管支症状の消長があることもこれらが抗原としての室内塵の状態に大きく左右されているのを物語るものであろう。
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