特集 発達障害者支援の到達点—新しい支援の枠組みを考える
子どもの心の発達支援—子どもの心の診療ネットワーク構築
奥山 眞紀子
1
1国立研究開発法人国立成育医療研究センターこころの診療部
pp.364-369
発行日 2018年5月15日
Published Date 2018/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208887
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子どもの心の診療ネットワーク事業の成り立ち
1.子どもの心の診療拠点病院事業(モデル事業)の背景
子どもの心の問題は1980年代から徐々に増加し,1990年代には医療機関に受診を希望する子どもが急増した.その背景には,①発達障害の概念の変化とそれへの注目,②発達障害と診断される子どもの増加,③子ども虐待による精神的な問題の増加,④うつなどの治療可能な精神障害に対する認識の増加などが挙げられるであろう.しかし,それに対応することのできる医療者の不足も顕著になり,その解決に向けて,2005(平成17)年3月から「子どもの心の診療医」の養成に関する検討会(座長:柳澤正義.以下,本検討会)が厚生労働省母子保健課の下で開催され,12回の議論を経て,2007(平成19)年3月に報告書が編纂された1).検討会には関連する学会や医会の代表者などが集まり,本音で議論がなされた.最初は精神科と小児科の考え方の違いなどが論争になることもあったが,最後は子どもの心の診療を構築する方向性で一致できたことが大きな収穫の一つとなった.
本検討会では,まず,対応できる医師を増やすべく,①一般小児科医や一般精神科医も子どもの心の問題に対応してもらえるようにし,そのサブスペシャリティーとして,②子どもの心の診療を定期的に行っている小児科医や精神科医,③もっぱら子どもの心の診療に携わる専門的な医師,の3層を考え(図1)1),それぞれの教育に関する到達目標を明確にした.これを基にしてテキストを編纂し,それぞれに対する研修会などを企画し,これを継続した.
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