特集 発達障害者支援の到達点—新しい支援の枠組みを考える
発達障害者支援法が目指すもの
日詰 正文
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1厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 障害福祉課 障害児・発達障害者支援室
pp.358-363
発行日 2018年5月15日
Published Date 2018/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208886
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地域保健の仕事に重なる発達障害者支援
地域保健の分野の仕事と発達障害者支援の仕事の性格は非常に似ている.地域保健分野の仕事は,医療機関で行うような診断や治療ではないし,入所や通所の対応を毎日行う直接処遇の仕事でもない.それらの支援につながる前後の相談や,疾病などの知識の啓発など,まさに「地域」を舞台にしたものである.発達障害者支援も,「障害」という文字が入ってはいるが,基本的には地域保健とかなり似た仕事を行っている.
わが国の「発達障害」は,2004(平成16)年に成立した発達障害者支援法第2条に「自閉症,アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害,学習障害,注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されている.そのため,上記の診断がつく者のみを対象にした取り組みを行っているものと誤解されやすいが,実際には,乳幼児健診や就学時健診における発見,国民に対する知識の啓発など,診断前の支援についても重要な位置付けとなっている.また,2016(平成28)年の改正発達障害者支援法1)(以下,平成28年改正法)では,発達障害「者」の定義に,無理解や差別,資源の不足などの「社会的障壁により」日常生活や社会生活に制限を受けているという視点が追加され,身近な「地域」の中で暮らすことへの支援が重視された(表1〜3,図1)2).
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