特集 発達障害者支援の到達点—新しい支援の枠組みを考える
わが国の児童発達支援の動向
加藤 正仁
1,2
1一般社団法人全国児童発達支援協議会(CDS JAPAN)
2社会福祉法人からしだね 児童発達支援センターうめだ・あけぼの学園
pp.370-376
発行日 2018年5月15日
Published Date 2018/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208888
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はじめに
わが国の子どもを巡る施策については近年,多くの話題が提供されている.その背景の一つとして,1989年の合計特殊出生率の「1.57ショック」に象徴される少子化傾向に歯止めがかからず,わが国の人口が2005年以降,減少し始めたことがあるだろう.子どもを産み,育てやすい社会体制づくりを国家的な重大施策として取り上げ,検討した一つの成果物が2012年の「子ども・子育て関連3法」の制定であり,さらには直近の幼児教育無償化問題である.しかし,これらにはいずれも障害児関係への言及が除かれていたということを,読者はどこまでご存じであろうか.
わが国においては,子どもの「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」などが1994年に「子どもの権利条約」として批准されているが,虐待児件数は今日もなお,飛躍的な増大を示し続けている.問題は,育ち・育てづらさのある子どもがより多く,その被害にあっているのではないかとの懸念である.
今日は経済的な繁栄を謳歌する世相であるが,人類の歴史を振り返ると,激動の社会や強者が価値を持つ社会では,その社会のもたらすひずみは弱者により収斂しがちである.「子ども受難の時代」と言われるように,社会的な弱者になりがちな子どもと家族,とりわけ障害児とその家族にとって生きづらい社会となっているのではないかというイマジネーション力が,われわれ関係者に今強く求められている.
本稿では,子どもと家族に寄り添うことをミッションとしたわれわれの療育事業の展開を1990年代から概観し,今日的な発達支援の課題と今後の方向性を検討する.
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