特集 たばこと健康
喫煙と循環器病
青木 伸雄
1
,
堀部 博
1
,
笠置 文善
1
Nobuo AOKI
1
,
Hiroshi HORIBE
1
,
Fumiyoshi KASAGI
1
1国立循環器病センター疫学部
pp.230-235
発行日 1986年4月15日
Published Date 1986/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207238
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■はじめに
各国における虚血性心疾患の近年の様相(1969〜1978年)をみると,米国・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドなどでは,虚血性心疾患死亡率は依然として高いが減少傾向を示し,スコットランド・イングランドなどでは虚血性心疾患の死亡率は高いが,年次変化はほとんどみられず,逆に,西ドイツ・スペインなどでは増加傾向がみられている1).
日本の虚血性心疾患の死亡率は,欧米諸国に比べるとかなり低いにもかかわらず,74歳以下のすべての年齢階層で減少傾向を示している2).しかし虚血性心疾患の死亡者総数は昭和48年42,399人,53年45,620人,58年49,909人と著しく増加している3).虚血性心疾患発症の危険因子を明らかにするために,Framingham studyをはじめとする多数の追究疫学的研究が行われてきており,一般に,主題の喫煙は虚血性心疾患の重要な変更可能な危険因子である4)と考えられている.また,循環器疾患の総合的予防対策の基礎となる,虚血性心疾患の危険因子(高血圧・高コレステロール血症・喫煙など)に対する,地域集団における疫学的介入研究等が,米国・フィンランド・ノルウェーなどで実施されており,危険因子の危険水準の低下が観察されている.
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