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肺血管系に対する喫煙の影響 タバコ煙自体が,肺血管障害の発端因子として注目されている1).例えば,COPDの肺動脈にみられる変化は,健常喫煙者の肺動脈でも観察される.気流閉塞のない喫煙者の肺動脈では,COPDと同程度に,内膜の過形成2),内皮型一酸化窒素合成酵素(endothelial nitric oxide synthase;eNOS)発現の低下3),血管内皮成長因子(vascular endothelial growth factor;VEGF)発現の増加4),炎症細胞の浸潤5)などを認める.これら変化は,非喫煙者ではみられない.さらに,肺血管障害に関連する遺伝子の発現を比較すると,中等症COPDと重症COPDよりも,健常喫煙者と中等症COPDとの間で類似性を認める6).すなわち,タバコ煙自体が,肺高血圧症に繋がる血管障害の要因として,重要な役割を果たす1,7).
ヒト肺動脈内皮細胞をタバコ抽出液に曝露すると,eNOSの活性と蛋白量が,時間および用量依存的に減少する8).タバコ抽出液はウシ肺動脈内皮細胞において,エンドセリン1の遺伝子発現と蛋白合成を誘導する9).タバコ煙中の不飽和アルデヒドであるアクロレインへの曝露は,ヒト肺動脈内皮細胞中のプロスタサイクリン合成酵素のmRNA発現と蛋白量を減少させる10).タバコ抽出液により内皮細胞はスーパーオキサイド(superoxide)を発現し,その結果,NOの不活化とパーオキシナイトライト(peroxynitrite)の増加を引き起こし11),酸化およびニトロソ化ストレスが亢進する.タバコ抽出液は肺動脈内皮細胞にp53依存性のアポトーシスを誘導し12),シルデナフィルによりこのアポトーシスは抑制される13).以上のように,喫煙による血管作動性物質の不均衡が,肺血管障害の発症と進展に重要な役割を果たしている.
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