特集 たばこと健康
喫煙の心理
小川 浩
1
Hiroshi OGAWA
1
1愛知県がんセンター研究所疫学部
pp.236-244
発行日 1986年4月15日
Published Date 1986/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207239
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■はじめに
たばこと喫煙習慣の歴史は,1492年のコロンブスの新大陸発見にさかのぼる.スペイン,ポルトガル,フランスへと広まり,1570年にはイギリスに伝わり,1599年には日本で初めてたばこが栽培されるに至った1).わずか百年の間に世界中に広まったことは,当時としては驚くべき速さであったに違いない.喫煙習慣は同時に各国で厳しい排撃に遭遇しながら,脈々と残りつづけ,今日に至っている.
たばこの中味やその健康影響は多数の研究によって明らかにされているが2〜4),たばこを吸う習慣または行動についてはさほど多くは知られていない.喫煙対策が公衆衛生の重要課題となっている現在,喫煙習慣を支えている心理・社会的背景要因を検討してみることは,喫煙対策を効果的に進めるうえにも意義があり,また人間行動の理解のうえにも興味ひかれる問題である.
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