特集 循環器疾患の疫学
虚血性心疾患の疫学と予防
堀部 博
1
,
青木 伸雄
1
,
笠置 文善
1
Hiroshi HORIBE
1
,
Nobuo AOKI
1
,
Fumiyoshi KASAGI
1
1国立循環器病センター疫学部
pp.166-173
発行日 1984年3月15日
Published Date 1984/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206830
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■はじめに
「虚血性心疾患」という言葉は,第8回改正国際疾病分類に採用され,それまでの「動脈硬化性ならびに変性性心疾患」よりは,遙かに概念が明確になった.虚血性心疾患というのは,虚血という病態生理学的な考えに基づいており,その原因は多彩である,このことを常に念頭において,その疫学と予防を考慮する必要がある.
最近では,国際保健機構においても,世界の人口動態統計以外では,専門委員会などで虚血性心疾患よりも,「冠状動脈心疾患」(CHD=Coronary Heart Disease)という言葉を多く用いている.しかしこれは解剖学的になっただけで,その意味の広さにおいては大同小異であり,非特異的である.Hurstらは,冠状動脈心疾患を一般的な用語とし,それを2つに分け「冠状動脈粥状硬化性心疾患」とそれ以外のもの,「冠状動脈非粥状硬化性心疾患」にしている6).欧米先進国に虚血性心疾患が非常に多いのは,主として前者の粥状硬化性心疾患が多いためであり,冠状動脈性心疾患と同一視して用いられていることもある.
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