特集 新しいヘルス・ボランティア
保健・福祉領域におけるボランティア活動—吹田母子会の活動
剣吉 淑子
1
1(社)大阪府衛生婦人奉仕会吹田母子会
pp.386-390
発行日 1978年6月15日
Published Date 1978/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205623
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はじめに
吹田市は大阪市の東北に境を接する衛生都市で,蝙蝠(こうもり)が羽を広げて西に向かって飛んでいるような形をしている.広さは36km2,人口は30万余で,昭和15年に市制が敷かれた.国鉄東海道線と名神高速道路が市を斜めに横切っており,また中国縦貫道路の起点でもある.大阪京都線,大阪中央環状線,御堂筋線など主要な鉄道網が発達していて,阪急千里山線や大阪の地下鉄も深く乗り入れているので,交通は便利である.
近頃の吹田市は,世界的な舞台になったりしてまことに華やかな脚光を浴びているが,25年頃に母子会が誕生したときは,実に寂しい姿の町であった.戦禍のためにその後も廃虚の跡がきびしく残り,不衛生きわまる町であった.乳児の葬式がやたらと多く,母親の顔色も一向にさえなかった.戦後の混乱がいくらか収まりかけたとはいうものの,不潔でジメジメした町には生彩がなく,住民は食うに追われ,明日への希望をもつことさえ忘れがちだった.保健所としても,どこから,どのようにしたら,と手の着けようがなく,困っていた.母と子の健康ということでアドバイスをしてくれる方があって,PTAの女性たちと会い,いろいろ話し合った結果,人工中絶の問題,乳児死亡の問題,家庭の健康管理の問題など,話が身近であるだけに,打てば響くようにして関心が高まり,女性の力でこの町を明るい健康な町に改めようと,一斉に立ち上がった.
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