特集 住宅と健康
第8回社会医学研究会・主題報告と総括討議
主題報告Ⅳ
住宅政策のありかた
報告1.日本の住宅政策史と森林太郎と造家・居住衛生論
丸山 博
1
1阪大医学部衛生学教室
pp.652-653
発行日 1967年11月15日
Published Date 1967/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203574
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日本の住宅政策史については研究調査の半途に演者は立っている。ただ次の二つの問題点を指摘し,これが今日的課題であること,①都市計画,都市政策の一環としたもの,②労働者福祉厚生対策,労働政策の一環としたもの――労務者供給住宅,会社給与住宅,(社宅,工場附属寄宿舎)あるいは公務員宿舎(官舎)などに2大別できるが,①の問題にだけふれる。②の課題は久保氏論文(「労働者の住居問題」)にゆずりここでは略す。
明治5年の東京銀座大火(焼失町数42,およそ5,000軒,死者8人,負傷者60人)に際し,東京府知事由利公正は火災の翌日ただちに正院(現在の内閣に相当する)に赴き,都市計画を実施し,不燃建築物による近代都市を建設すべきことを進言した。火災から4日目の2月30日には,太政官から東京府へ達がでた。ここにはじめて東京市区改正の政府方針がでたのであった。しかし政府も東京府も具体的な改造計画や財政計画をもっていたわけではなかった。そのために煉瓦街建設事業は迂余曲析の結果,銀座大火焼失区域全部にも及ばず,わずかに銀座八丁の不燃化におわって,明治10年に竣工をみたにすぎなかった。
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