連載 『ケア学』の新地平 広井良典のケアをめぐる交話・2
ケアと森林
広井 良典
1
,
上原 巌
2
1千葉大学法経学部
2東海女子大学人間関係学部/森林療法研究会
pp.190-193
発行日 2004年2月1日
Published Date 2004/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100408
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
森林療法の効果とデータ
広井 今日は森林療法を日本で先駆的に進めておられる上原先生にお越しいただきました.おそらく読者のなかには,「森林療法」という言葉を聞くのも初めてという方も少なくないと思いますが,上原さんはなぜ森林療法に関心をもたれたのでしょう.
上原 大学の農学部林学科を卒業後に勤めていた長野県の農業高校で,近隣の養護学校との交流教育の一環として,知的障害のある生徒さんたちといっしょに至近にある演習林や栗畑へよく散歩に出かけました.そのなかで,養護学校の先生から「普段は無気力でレクリエーションの誘いにもけっしてのらないような生徒が,栗畑に来たら目をギラギラさせて栗を拾いはじめた」とか,「森林浴をしたあとでは,いつも笑わない子にも笑顔が戻ってくる」などのエピソードを聞き,いわゆる「森林浴」の効果が目に見える形で表れるのだなと感心したんです.私は以前から森林のもつカウンセリング効果には興味をもっており,この分野を追究しようと,職を辞して大学院に入り直した次第です.
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.