特集 社会開発と公衆衛生
府県レベルの考察
北野 博一
1
1新潟県衛生部
pp.8-11
発行日 1966年1月15日
Published Date 1966/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203175
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I.地域開発の中に占める社会開発の比重
戦後10数年経って経済成長も所得倍増計画に沿って順風満帆であったが,階層間格差・地域格差はますます増大したため,地域格差の解消を目標とした国の施策とそれに呼応して各地方自治体が乗り遅れまいとすることから,日本中いたる所が開発ブームにわいたのも,つい先頃のことであった。新産業都市・工業整備特別地域・低開発地域工業開発地区などの指定をめぐって競争も華々しかったし,バラ色ムードの地域開発計画が各所で発表されたのも時代の要請であった。生産を拡大して国民の生活水準を引きあげ地域住民の幸福を願っての施策であった。
しかし真の住民福祉は所得の増大だけで得られるものではないし,かえって地域別・階層別・職業別に格差をむしろ増大する結果をもたらすために生活上の不安や相対的貧困感が強まるという経済発展のひずみとしての社会変動の摩擦が起こり,あるいは公害の発生など,住民の福祉が阻害されるばかりでなく経済発展をも阻害する要因となるという反省が生まれ,社会開発の理念の導入となった。
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