特集 地域保健医療計画の実際
府県単位にみた病院計画
倉田 正一
1
1慶応義塾大学病院管理学
pp.38-44
発行日 1977年1月15日
Published Date 1977/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205323
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I.「府県単位にみた病院計画」という意味について
「府県単位にみた病院計画」というテーマを与えられたのであるが,筆者は,病院計画が府県単位のみで進めうるとは毛頭考えていないのであって,地域単位は府県ではなく,住民の生活圏にもとついた「医療圏」である,という結論をえている.
かつて,昭和47年,医療基本法案が第68国会に提出されたことがある.医療の理念をふまえて,国および地方公共団体が国民医療の確保のために講ずべき施策の基本を定める,というのが提案理由であった.国としてこのような姿勢が示されたことは一大進歩と考えられるのであるが,問題は,その施策の大綱の決め方にある.厚生大臣は附属審議会の意見をきいて,国が講じようとする医療計画の案を作成し,閣議決定を求める.これはナショナルレベルとしては当然であろう.しかし,都道府県レベルではどうなるであろうか.法案によれば,都道府県知事は都道府県医療計画審議会の意見をきいて計画を定めるのであるが,その施策というのは「国の施策に準ずる施策を講ずるほか,当該地域に必要なその他の施策」となっており,しかも医療展開の場の単位と考えられる医療圏に関しては,「必要に応じ,自然的・社会的条件を勘案して区分する地域ごとに計画を定めることができるが……」ということで,結局,施策は国から県へ,県から地域へ,すなわち中央から末端へ流してゆくというのが,法案を貫く思想であるとみることができる.
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