--------------------
所謂非病原性抗酸性菌について
宍戸 昌夫
1
1横濱醫科大學
pp.11-15
発行日 1952年5月15日
Published Date 1952/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201031
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
標題に掲げた呼稱は,從來自然界抗酸菌,類似抗酸菌,死物寄生性抗酸菌又は抗酸性雑菌等と呼ばれてきたものと同樣の謂で結核菌の各型,人及び鼠の癩菌,Johne's diseaseの病原菌など既知の病原性抗酸性菌を除いた全ての抗酸性菌を包含して假に呼稱したものに過ぎない。勿論非病原性という呼稱が必ずしも當を得たものでないことは筆者も論ずるに吝ではない。しかしここでは慣用にならつてこのような呼稱をとることにする。
さて,これらの菌群が,われわれ公衆衞生の分野でいかなる役割を演ずるかは改めて指摘するまでもなく,結核豫防の領域に於てである。それが既に古くKoch1)によつて豫見せられたことは,その後の本菌群に關する數多くの研究に1つの有力な指標を與えたものとして重要な意義を持つものと言えよう。1909年に至つて,これらの菌が,結核菌と誤られる實際の例證が發表せられた。即ちBrem2)は,一結核患者の血液から多數の抗酸性菌を見出し,しかも動物實驗に於ては結核性病變の陰性に終つた實驗例に遭遇し,これを追及した結果,實驗に用いられた蒸留水中から本菌群を分離することができた。次いで1910年には,Beitzke3)は,研究室の水道水中にこれらの菌群の存在することを認めている。
Copyright © 1952, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.