連載 公衆衛生Up-To-Date・14
食品に含まれる放射性物質の調査
堤 智昭
1
1国立医薬品食品衛生研究所食品部
pp.208-212
発行日 2014年3月15日
Published Date 2014/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102974
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
2011年3月11日の東日本大震災により発生した東京電力福島第一原子力発電所(以下,福島原発)の事故により,大量の放射性物質が周辺の環境に放出された.その結果,食品の放射性物質による汚染が危惧されたため,原子力安全委員会により示された「飲食物摂取制限に関する指標」1)を緊急的な措置として食品衛生法上の暫定規制値とした.しかし,暫定規制値はあくまで事故後の緊急的な措置として定められたものであったため,食品安全委員会によって行われた放射性物質の食品健康影響評価を踏まえて,2012年4月より現行の基準値が施行された(図1).暫定規制値では,食品からうける放射性物質の年間の預託実効線量が5mSvを超えないように食品中の規制値を設定していた.一方,現行の基準値ではより一層の安全と安心を確保する観点から,規制対象となるすべての核種から受ける年間の預託実効線量が1mSvを超えないように食品中の基準値が設定された.現行の基準値では福島原発事故の状況を踏まえて,放射性セシウムの他,放射性ストロンチウム,プルトニウムなどを規制対象核種とし,これらすべての核種からの年間の預託実効線量を合計して1mSvを超えないように,食品中の放射性セシウム(Cs134と137の合計)の基準値が設定された.このような状況の中,筆者らは,新たな基準値に対応した放射性物質の試験法を整備し2,3),さらに食品中の放射性物質の規制の効果や妥当性の検証を目的に,流通食品中の放射性セシウムの検査,並びに食事試料からの放射性セシウムの預託実効線量の推定を実施してきた.本稿ではこれらの調査結果について紹介する.
Copyright © 2014, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.