連載 My Current Favorite・36
人の器や心の成長を促す—適応課題と成人発達理論
本田 知久
1,2
1総合南東北病院リハビリテーション科
2総合南東北病院教育研修室
pp.472
発行日 2025年4月15日
Published Date 2025/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091505520590040472
- 有料閲覧
- 文献概要
現在の関心事は?
私は病院のリハビリテーション科と教育研修室を兼務しているため,職員の教育について相談されることが多くあります.その相談内容は知識や技術指導といった技術的問題よりもむしろ,「ミスを繰り返しやる気がない」や「厳しい指導で部下がつぶれている(結果,改善もしない)」といった内容がほとんどです.このような,それぞれが(無自覚に)もっているものの見方や考え方に根差した,そのままでは対応が難しい課題のことを,ロナルド・ハイフェッツは「適応課題」と定義しました.適応課題を解決するためには見方や考え方の一部を変更もしくは手放すことが求められます.
そこで役立つ考え方の一つが成人発達理論で,スザンヌ・クックやロバート・キーガンといった研究者が有名です.成人発達理論は,成人してからも知性や思考が発達するという理論です.つまり人の器や心は成長し得るということです.困った職員がどの発達段階の問題行動をとっているかを踏まえ,段階に応じた成長機会を提供することで本人の考え方を揺さぶっていきます.
Copyright © 2025, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.