日本老年看護学会第9回学術集会特集 シンポジウムⅡ
高齢がん患者と家族の成長を促す看護
吉田 千文
1
1千葉大学医学部附属病院
pp.34-39
発行日 2005年3月15日
Published Date 2005/3/15
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1.高齢者とその家族にとってのがん療養の意味
がんは高齢者の重要な健康問題のひとつである.がん治療の飛躍的な進歩で,がんは慢性疾患とも言われるようになっている.しかし,多くの高齢者にとって,がんの診断を受けることは肉親や友人などの壮絶な療養を思い起こさせ,耐え難い苦痛,死,自己イメージの崩壊を意味するものとなる.一方高齢の配偶者やその子どもにとっても,家族を築き人生の大半をともに歩んできた特別の存在の喪失を予測させる衝撃的な出来事である.
近年は高齢がん患者にも侵襲の大きな手術が適用されている.加齢による心身機能の低下を自覚している高齢者にとって,このような治療の選択は大変な決断を迫るものである.そしてがん治療によって生じた身体機能の変化への適応や新たな生活様式の獲得過程も,高齢者にとっては苦しく険しい道のりである.入院期間の短縮化によって,回復不十分な状態で自宅療養を求められることはこの困難さに拍車をかけている.
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