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はじめに
「子どもの看護を行なう際の特徴はどこにあるのだろうか?」という問いに対して,多くの看護者が,「成長発達を考える」という内容を答えに含めている。在宅療養する子どもたちに対しても,「成長発達への支援」は看護者の重要な役割といえるだろう。筆者らが2000年に実施した訪問看護ステーション・訪問看護部への調査1)では,小児を対象に訪問看護を実施していた58か所中,「発達判断・支援」の実施は22か所,家族への指導は30か所で行なわれているという結果が出されていた。この数は少ないのだろうか。あるいは実施されているとみるのだろうか。
現在の小児訪問看護の対象の背景をみると,なんらかの医療的ケアを必要とする重度の障害を持っている場合や,重度の運動機能・知的障害を併せ持った子どもが多いこと,また未熟な状態での出生,先天性の疾患や慢性疾患,過去の大きな疾病により,同じ年齢の子どもとは成長・発達の状態が異なる場合が多いことがあげられる。
成長・発達へのケアは,日頃の看護の中で実施できているという実感を持ちにくいかもしれないが,「運動機能訓練を行なう」「特別な方法で,能力を向上させる」ことのみで,子どもは成長・発達するわけではなく,「その子どもらしく,家族や社会の中でよりよく生きる」ための働きかけが,総合されて成長・発達の支援になっていることを認識することが重要である。そして,障害・疾病という「『問題』があり,できないことがある」から出発するのではなく,その子どもが「どうあってほしいか」,「そうなりたいこと・したいことがある」という認識から支援が行なえると考えられる。その支援は,広範囲にわたるため,本稿の内容は,その中のほんの一部である。
なお,ここでは,「成長」を形態的・量的変化の意味で,「発達」を機能的・質的変化の意味で用いる。また,主にケアについては,運動機能障害と知的障害が重複した子どもをイメージした内容になっていることをお断りしておく。
成長・発達の評価は,その子どもなりのプロセスの中でどのあたりにあるのかを知り,発達のペースを把握して支援の方向性を決定するために行なう。家族とともにその状態を知っておくことは,子どもを長期的にとらえる上で必要であるが,「こうならねば」というチェックや同年齢の子どもとの比較をするためではない。子ども自身にも家族にもプレッシャーにならないように,家族や子ども自身がそのことにとらわれないように配慮して実施する。
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