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脊椎脊髄疾患の鑑別疾患は多岐にわたる.「知らない病気は診断できない」の原則で,まれな疾患においては診断がつかぬまま,患者さんは数々の病院を渡り歩くことになり,正しい診断と治療までに長い時間と労力がかかってしまうことがしばしばである.そのようなことが少しでもないように,本特集では,本誌でこれまであまり取り上げられてこなかった比較的まれな疾患にも焦点を当てた.早期の診断・治療が予後に影響する疾患が多いためである.
上肢または下肢の運動障害を主徴とするものとして,ポリオ後症候群,segmental zoster paresis,高CK血症を伴う神経原性下腿筋変性症(これらは髄節性分布の筋力低下や筋萎縮を呈する),多巣性運動ニューロパチーおよび糖尿病性筋萎縮を取り上げた.一見奇妙な四肢・体幹の運動症状を呈するものは,機能性神経障害(functional neurological disorders)と誤診される可能性があるが,その中で両下肢の変動する筋力低下を主徴とするLambert-Eaton症候群や,四肢や体幹の筋肉のこわばりを主徴とするIsaacs症候群とstiff person症候群を取り上げた.痙性対麻痺を呈するものとして,脳腱黄色腫症とadrenomyeloneuropathyを,両肩の痛みと上肢挙上困難をきたすリウマチ性多発筋痛症を取り上げた.これらの疾患は厚生労働省の指定難病になっているものも多く,診断基準なども記載されている.本特集では,それぞれの疾患について経験豊富な先生方に,疾患を想定して診断に導けるように,ポイントとなる特徴的な病歴や主要症候(症状と徴候)および検査所見について解説していただいた.また,歴史から最新の知見を含む必要十分な情報が,簡潔にまとめられている.

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