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神経学的診察において,上下肢では,感覚障害の分布や個々の筋の筋力評価および各腱反射のパターンなどにつき詳細に調べて評価するが,胸腹部と背部を含む体幹部では,皮膚のデルマトームから感覚障害を捉えて胸髄病変でのレベル診断をするくらいで終わっていることが多い.体幹部は神経症候が捉えにくく,日常の臨床において上肢や下肢よりも診察がおろそかになっている.本誌ではこれまでに「手の症候」(2011年24巻7号)および「足の特異な症候」(2013年26巻7号)が特集されているが,体幹部の症候についてはあまり注目されてこなかった.そこで今回は「胸腹部の神経学」と称して,背部を含む体幹部の感覚,運動および自律神経のさまざまな症候を,解剖・生理の基礎に立ち返りながらまとめようと企画した.
まず感覚系については,デルマトームの歴史の基礎から始まり,臨床での主要感覚症候からまれな感覚症候までを網羅的に,神経症候学の権威である福武敏夫先生にうまく整理してまとめていただいた.そのほかに感覚系では内臓疾患の関連痛と体幹部のニューロパチーを取り上げ,運動系では胸腹部および背部の筋について,呼吸機能,脊柱変形およびミオパチーの3つの観点から,解剖・生理から臨床までを,それぞれの分野のスペシャリストの先生方に詳述していただいた.体幹部の数少ない反射である腹皮反射と腹筋反射,およびBeevor徴候は,いずれも古典的な重要な手技や徴候であり,最近の情報を含めて新進気鋭の先生に執筆していただいた.最後に自律神経症候として,普段あまり注目されていない体幹部の発汗異常について,発汗の自律神経学の第一人者である齋藤 博先生に基礎から臨床まで多くの内容をコンパクトにまとめていただいた.
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