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DISH(diffuse idiopathic skeletal hyperostosis:びまん性特発性骨増殖症)は,脊椎や末梢腱・靭帯付着部(peripheral entheses)に異所性に発生する特徴的な骨化形態として現れる病態です.歴史的には,1950年にForestierが主に高齢者に起こる脊柱前縦靭帯の骨化を病態とする疾患を強直性脊椎骨増殖症(ankylosing spinal hyperostosis)として詳細に報告しました.その後,1975年にResnickらが脊柱以外の靭帯にも骨化が生じているとして,このDISHの名称を提唱してから広く認知されるようになりました.
このDISHは脊椎の前縦靭帯骨化を主病変とする病態から巨大頸椎高位前縦靭帯骨化による嚥下障害や脊柱不撓性をもたらすものの,後縦靭帯骨化症(ossification of posterior longitudinal ligament:OPLL)や黄色靭帯骨化症(ossification of ligamentum flavum:OLF)とは異なり,単独で神経障害や著しい疼痛をもたらすことはまれな疾患です.しかしながら,高齢者の脊椎疾患の治療を行っているとDISHが基盤に存在する脊椎疾患の取り扱いがしばしば問題になり,多くの注目を集めるようになりました.巨大頸椎高位前縦靭帯骨化による嚥下障害は以前から知られていましたが,通常はたまたま腰痛や背部痛で受診した際にX線学的に連続する前縦靭帯骨化と軽度の脊柱不撓性を認めるだけで,大きな生活障害を認めることはまれです.強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis:AS)と異なり,仙腸関節や椎間関節は侵されないのが特徴で,画像診断の解像度の進歩に伴い,診断は容易になりました.そして,このDISHが決してまれでないこともわかってきました.高齢化に伴い,脊柱管狭窄症や骨粗鬆症を基盤とした脆弱性骨折を生じた場合は,DISHの存在が大きな問題になります.すなわち,それまでほとんど無症状で日常生活を送っていた患者さんが,ひとたびこのようなインシデントが起きると,DISHの有無により機能的予後が大きく影響されます.
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