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あとがき
水島 恒和
pp.1390
発行日 2025年11月20日
Published Date 2025/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698570800121390
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消化器外科診療に携わっていると,日々の臨床の中で「まれ」な腫瘍に出会うことがあります.頻度は低くとも,診断や治療に迷いが生じる症例ほど記憶に残るものです.そうした場面では,既存のガイドラインや教科書に明確な答えはなく,文献を探し,先輩に相談しながら,最適と思われる方針を組み立てていくことになります.診療とは常に不確実性との向き合いであり,確信を持ちきれないまま決断を下すことも少なくありません.
私自身,現在は下部消化管外科を専門としていますが,これまでに何度か同様の状況に直面してきました.腫瘍の希少性に加え,患者さんの背景や希望,施設の体制など,考慮すべき要素は多岐にわたります.もちろん,大学病院やがんセンターに紹介することで診断から治療までを専門的に委ねることは可能ですが,すべての症例がそうした選択肢に当てはまるわけではありません.たとえば,症状が強く時間的猶予がない場合や,遠方に住む患者さんが高次医療機関への受診を躊躇される場合など,紹介そのものが現実的でないこともあります.そうした状況下で「自施設として何ができるか」を考えることこそ,消化器外科医としての責任でもあると感じています.

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