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編集後記
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pp.1190
発行日 2025年11月10日
Published Date 2025/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698220530111190
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2025年も残り少なくなってきました.今年は昭和で数えると昭和100年,三島由紀夫生誕100年に当たり,都内でも三島に因んだ企画展がさまざま催されています.さて,三島の珍作「卵」(新潮文庫「憂国・花ざかりの森」収載)をご存じでしょうか.超人的にがらっぱちな学生たちとその下宿先の女主人(明治生まれ)との苛烈な世代間攻争から始まる短編で,小説の天才が大真面目にナンセンスを描くとこうなるのか……という奇妙な読書体験ができます.
コロナ禍の影響でしょうか,編集室でもこの数年で教育や臨床現場における世代間ギャップに関する話題を耳にすることが増えてきました.書店でも「若いスタッフを退職させないコミュニケーション」をテーマにした本が並んでいますし,組織運営も新たなフェイズに入っているのだなあと思っております.異なる世代の方の価値観に想像力を働かせることは大前提ですが,「スタッフ間でも患者さんでも,今は共通の趣味さえあれば世代の壁は容易に超えることができる」という心強いご意見も頂戴しました.「卵」の女主人が,けたたましいほどに元気な学生たちと共通の“推し”をもっていたとは到底思えませんが,現代人であればお互いにきっとそれができそう……なんていう希望が見えてきます.

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