Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「104歳,哲代さんのひとり暮らし」—「人生100年時代」のロールモデルここにあり
二通 諭
1
1札幌学院大学
pp.539
発行日 2025年5月10日
Published Date 2025/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698220530050539
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ドキュメンタリー「104歳,哲代さんのひとり暮らし」(監督/山本和宏)は,1920年生まれの“哲代さん”こと石井哲代の広島県尾道市の山あいの地における101歳から104歳までのひとり暮らしの日々を映像に収めたものである.2025年1月31日から先行公開された広島では,17日間で1万人超の観客動員となった.これは,哲代が「人生100年時代」註)のロールモデルたりえていることによると筆者は考えている.
哲代は元小学校教員である.師範学校を出て20歳で教員になったというから,戦前・戦中の軍国主義教育と戦後の民主教育という,価値観が真逆の世界で仕事をしてきたことになる.哲代が初めて担任となったのが1941年の小学校1年生.いまや米寿(88歳)を迎える当時の教え子たちとの同窓会で,真珠湾攻撃によって日米開戦の火ぶたが切られた12月8日の朝,校長が頭から湯気を立てて朝礼台に上がったとのエピソードを紹介する.当時,哲代の胸中にあったのは,この子らを戦争に行かせたくない,そのためにもこの戦争が早く終わってほしいとの願いだった.どこか「二十四の瞳」の女教師・大石久子の心情に通じるものがある.
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