文学にみる病いと老い
(92)「ひとり暮らし」
長井 苑子
,
泉 孝英
pp.126-129
発行日 2016年4月20日
Published Date 2016/4/20
DOI https://doi.org/10.34449/J0001.34.04_0126-0129
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結婚式より葬式が好きだ。葬式には未来がなくて過去しかないから気楽である――。毎日の生活のなかで,ふと思いを馳せる父と母,恋の味わい,詩と作者の関係,そして老いの面白味。……日常に湧きいづる歓びを愛でながら,絶えず人間という矛盾に満ちた存在に眼をこらす,詩人の暮らし方。ユーモラスな名エッセイ。(文庫本カバー裏より引用)「人という字は,人と人とが支えあっている様を示している」と昔からいわれている。人類*1が地球上で,類人猿*2から進化してきた気の遠くなるような時間の中で,ともかくも生き延びてきたのは,人と人との協力,社会の形成が大きいことであろう。集落・集団・社会*3の中で,人の役割,技術の進歩,命令系統の序列,子育ての支援としてのおばあさん仮説*4,病の癒しへの知恵の結集,自己表現とそれを普遍化できるまでの種々の芸術活動など,多様な活動が継続されてきている。「個人主義*5」という言葉はあるけれど,誕生から成長,老化と死のプロセスの中で,人はやはり一人では生き抜くことはできないことであろう。
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