Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
志賀直哉の『暗夜行路』—障害受容文学の系譜
高橋 正雄
1
1筑波大学
pp.228
発行日 2025年2月10日
Published Date 2025/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698220530020228
- 有料閲覧
- 文献概要
昭和12年,志賀直哉(1883〜1971)が54歳の時に完成した『暗夜行路』には,主人公の青年・時任謙作が自分の出生の秘密を知って懊悩する姿が描かれているため,一種の障害受容文学としても読むことができる作品である.
兄からの手紙で自分が祖父と母親の間に生まれたいわゆる不義の子であることを知った謙作は,「そんなら俺はどうすればいいのか」とつぶやく.その時の彼は茫然自失,「総てが夢のような気がした.それよりもまず,自分というものが—今までの自分というものが,霧のように遠のき,消えて行くのを感じた」と,非現実感を伴う離人症のような状態に陥っている.
Copyright © 2025, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.