Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
志賀直哉の『耄碌』—軽度認知障害当事者の不安
高橋 正雄
1
1筑波大学人間系
pp.1130
発行日 2016年12月10日
Published Date 2016/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552200804
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昭和31年に発表された『耄碌』(『志賀直哉全集第9巻』,岩波書店)には,73歳の志賀直哉が,自らの記憶の衰えを自覚し,それを不安に感じている様子が記されている.
直哉は,「若い頃は会った人の顔でも名でもよく覚えていて,次に会った時,直ぐそれを憶い出す方だった」が,「60前後からそれが怪しくなり,年と共に段々ひどくなった」.しかも,それは,「人の顔や名だけでなく,総てにそうなり,時には自分でも不安を感ずる事がある」ほどだったというのである.
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