増刊号 眼科診療のピットフォールあるある—対応スキル爆上げのヒント
8.視神経・神経眼科
甲状腺眼症—甲状腺眼症を見逃していませんか?
神前 あい
1
1オリンピア眼科病院
キーワード:
甲状腺眼症
,
甲状腺視神経症
,
高眼圧
,
眼窩MRI
,
TSAb
Keyword:
甲状腺眼症
,
甲状腺視神経症
,
高眼圧
,
眼窩MRI
,
TSAb
pp.260-264
発行日 2025年10月30日
Published Date 2025/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.037055790790110260
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はじめに
甲状腺眼症(thyroid eye disease:TED)は,自己免疫性甲状腺疾患に伴って発症する眼窩の慢性炎症性疾患である。主な原因はバセドウ病であり,甲状腺機能亢進に伴う全身症状の発症後,約3か月で眼症状が出現することが多く,バセドウ病発症前後18か月以内に眼症状を呈する症例が80〜90%に及ぶ1,2)。自験例では,全身症状が先行する症例が63%,同時発症が18%,眼症状が先行する症例が19%であった2)。甲状腺ホルモン値が正常で自己抗体のみ陽性の「euthyroid Graves' disease(EGD)」という病態も存在1)する。眼症状が先行する場合やEGDでは眼科が初診となることが多く,眼科医が甲状腺眼症を疑い診断する必要がある。患者の訴えで最も多いのは眼瞼腫脹であり,特に朝に症状が強く出現するが,しばしばアレルギーや加齢変化と誤診されている。眼瞼の所見,眼球運動,眼球突出などを的確に評価し,TEDを疑い,適切な初期対応と専門施設への紹介が重要である。

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