第1特集 予防&フォローがん診療
治療後(フォローアップと長期支援)
Patient Journeyを支える
東 光久
1
1奈良県総合医療センター 総合診療科
pp.1313-1316
発行日 2025年9月1日
Published Date 2025/9/1
DOI https://doi.org/10.15104/th.2025100015
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はじめに:「がん患者」ではなく,「がんとともに生きる人」
「この方は乳がんの患者さん(breast cancer patient)です」とわれわれはつい言ってしまう.しかし,その一言で,その人の多層な人生や役割が削ぎ落とされてしまうことがある.「がん患者(cancer patient)」というラベルではなく,「がんとともに生きる人」という表現が意味するのは,病をアイデンティティの全体にせず,一人の“人”として尊重する姿勢だ.この姿勢を言葉で表現したのが,person-first languageである.
person-first languageとは,たとえば“person with cancer”, “person living with cancer”のように,人を先に置くことで,その人がもつ可能性や尊厳を表現する方法である.そしてこの視点は,われわれ医療者が,患者の語りのなかにその人の価値観を見出し,寄り添っていくための前提でもある.
われわれが支えるべきなのは,「病気」ではなく,「病をもって人生を歩む人」だ.その歩みに寄り添う過程こそが,“Patient Journey”である.

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