特集 患者の思いを引き出して支え,力を高める意思決定支援
SDM(共同意思決定)とは
石川 ひろの
1
Hirono ISHIKAWA
1
1帝京大学大学院公衆衛生学研究科
pp.125-129
発行日 2025年3月1日
Published Date 2025/3/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango30_125
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SDMとは
shared decision making (SDM)は,患者中心的なケアの重要な要素として注目され,とくに2000年代前半から急速に研究が進んできた.共同意思決定,協働的意思決定などと訳されることもあるが,日本語でもそのままシェアード・ディシジョン・メイキングとよばれ,SDMと表記されることも多い1).その定義についてはさまざまな議論があるが,多くの定義で,「複数の選択肢について,信頼できる情報が利用しやすい形で提供され,医療者と患者・家族が協働して意思決定を行うプロセスであり,一般的には,患者・家族の関心,個人的状況,背景が意思決定に大きく影響する状況において行われる」ことは共通している2).SDMの定義についてレビューを行った研究では,SDMにおける必須要素として以下を挙げている3).
・問題を定義・説明する ・選択肢を示す ・長所・短所を議論する ・患者の価値観・意向を議論する ・医師の知識・推奨を議論する ・計画を遂行する患者の能力・自己効力感を議論する ・理解の確認・明確化 ・意思決定または明確な委譲 ・フォローアップの準備
患者と医療者は,同じ健康問題や病気についても,しばしば異なる視点でとらえ,異なる情報や考えをもっている.その両者が共通の基盤をつくること,すなわち「いま,何が問題なのか」「何を目標にするのか」をふまえて,「そのためにはどんな方法があるのか」「それを実行するためには,それぞれがどんな役割を果たすべきなのか」といった決定にいたるプロセスを共有していくことがSDMの本質であり,患者中心的なケアの中核にも置かれてきた要素である4)(図1).

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