特集 【研究する人間】木下康仁先生の功績と足跡
Ⅰ.研究者として,教育者として—木下康仁先生との在りし日
Ⅰ-5 未来への期待
木下先生からの学びと批判的実在論
荒居 康子
1
12021年度聖路加国際大学大学院看護学研究科博士課程修了
pp.65-66
発行日 2025年2月15日
Published Date 2025/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.002283700580010065
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私が木下先生の下で博士課程を取得しようと考えたのは,先生のM-GTAの代表作である「老夫,老妻ヲ介護ス」(木下,2009)を読み,対象者理解を助ける実践的な内容に感銘を受けたからである。その時私は訪問看護師として,不甲斐ない,できない自分を何とかしようともがいていた。介護を続けるご家族に対しては,「なんでこんなに介護を頑張れるんだろう? 明らかに頑張りすぎだと思うが,どういう支援が私にできるのか。根本的な支援とはなんなのだろうか」という考えが渦を巻き,当時の訪問看護ステーションの諸先輩方にたくさんのご迷惑をかけながらも,どうしていいかわからないことが多かった。
そんな思いを抱えて木下先生にいきなりメールを送り,実践に役立つ研究をされている先生の下で博士課程を取りたいと申し出た。先生は私の思いをただ聞いてくれて,最後に一言,結構あっさり「いいですよ」と仰った。こちらが「え,いいんですか?」と聞き返したくらいであったが,笑って,「もちろん入学するときに試験はありますよ」と言ってくださった。なぜあの時「いいですよ」と言ってくれたのかは聞きそびれてしまったが,木下先生ご自身も高齢者ケアに携わりながら博士論文を執筆され,臨床も社会学も理解しておられる方であったから,私の抱えていたものに対し,何か考えられたことがあったのかもしれない。
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