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日本皮膚科学会は国際化を大きな目標の一つとしており,皮膚科学会総会はそれを推進する役割も担っています.COVID-19のパンデミックで,人流が抑制され,日本は一時,鎖国のような状態になりました.この間に日本人の英語離れはかなり進んでしまった感があります.そのような中,第124回日本皮膚科学会総会を主催しましたが,海外から素晴らしい講演者を招待し,できる限り多くの会員に聴講いただけるよう腐心しました.まず,日皮会理事の先生方に,それぞれの専門分野の第一人者を1名ずつ推薦いただきました.また,藤本学理事長,椛島健治プログラム委員長にはヨーロッパの皮膚科学会であるEADVとのコラボレーションセッションやパートナーシップ教育講演を企画いただきました.聴講者のためには同時AI翻訳をプレゼンテーションスライドの真下に字幕表示するシステムを採用しました.日本人はもともと洋画を日本語字幕で見る習慣ができています.ふだん英語の講演の半分は聞き取れても途中でついて行けなくなる人にとって,同時字幕表示は聞き取れなかった単語もすぐにフォローできるため役に立ったのではないかと思います.英語は日本語と語順が異なり,文を最後まで聞かないと正しく翻訳できないという,越えられない壁がありますが,同時AI翻訳は英語を頭から訳して仮翻訳を青字で表示し,文が終わると瞬時に修正して白字に確定表示されるシステムです.人間の同時通訳よりも早く情報が見えますので,講演のスピードに取り残されることが少なく快適に思いました.もちろん青字の仮翻訳には珍訳も登場し,クスッと笑いを誘うこともありましたが,白字に表示されたときには専門用語も含めてほぼ完璧な訳でした.字幕表示なので視線をスクリーンからはずす必要がなく,耳で英語を聞きながら目で確認する作業は意外とスムーズにできるものだと感じました.また,訳をその場で確認できることで英語力の向上にも役立つのではないかと思いました.このような技術の導入により,今後ますます国際化が進むことを期待したいと思います.

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