- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
われわれ医師は患者さんの訴えを聞き,身体所見,検査所見をとり,知識と経験から判断を加え,治療を行っている.また,日常診療のなかから,「これは」と思うまれな疾患,重要と思われる事実,新しい解釈,治療経験などを論文として世の中に発信している.これらに共通して必要なことは,①事実を正確に把握すること,②それを正しく解釈し,考察すること,③他者にわかりやすく伝えることである.新聞記者も目的や対象は異なるが,記事を書くにあたって,非常によく似たプロセスを取っている.論文の著者も新聞記者も内容に関しては書く側にすべての権限があり,何を題材にするか,どこをクローズアップするか,そしてどのように表現するかは著者の自由である.近年,政治家のうかつな発言により,大臣就任まもなく辞任するケースが相次いでいる.政治家は法律の制定により国民の利益,幸福のため貢献することが求められているが,個人としての考え方と社会としての考え方,その時々の刹那的な考えと将来を見据えたときの考えなど自ずと異なるはずである.政治家は公人として発言をするべきであるが,マスコミも,何をどのように伝えるか,モラルと正確性,中立性が求められる.「死の町」「放射能つけちゃうぞ」発言の報道のあり方については一部で論議が巻き起こったが,こうした議論により政治家のみならずマスコミや社会が成熟することを切に願う.振り返って学術論文には中立性は求められていないが,事実に基づく理論的な考察により,医学の進歩に寄与することが求められている.症例の記述と教科書的な解説で終わっている論文を時に目にするが,新聞記事との違いをご理解いただき,ぜひ,「著者の主張」を展開していただきたいたいと思う.
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.