マイオピニオン
治療の進歩がない疾患に対峙するもどかしさ—解決方法の一つである医師主導治験
舩越 建
1
Takeru FUNAKOSHI
1
1慶應義塾大学医学部皮膚科学教室
pp.104-105
発行日 2025年2月1日
Published Date 2025/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.002149730790020104
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1. はじめに
医師として走り出しの頃に担当した患者さんに提供した治療.そのときに最善と考えられた治療.しかし,期待した効果は得られず,闘っていた患者さんに伝えなければならない瞬間の思いと闘いの後に残る空虚感.それから10年が経ち,同じ疾患に対峙することになった時,治療法が当時と何ひとつ変わっていなかったら…….十分な治療法があるわけでもないのに,なぜ変わらないんだろう,なぜ10年前と同じ治療しかしてあげられないんだろう,というもどかしさを感じたことを覚えています.若かりし頃に誰もが経験することかもしれません.
今はそのときとは見える景色が変わってきました.変わらない理由や背景ややるべきことがわかります.しかしその頃の私は,その疾患の専門家に対して「何をしてるんだ!」という苛立ちばかりを感じていました.臨床試験と治験の違いもわからない,治療を変える・新しい治療をしてあげられるようにするためにどうしたら良いのかもわからない,そして自分自身が努力していないにもかかわらず.でも出会いや機会に恵まれ,複数の医師主導治験に関わることとなり,その一つの成果として私が調整医師を担い行った医師主導の多施設共同治験「上皮系皮膚悪性腫瘍に対する抗PD-1抗体療法の医師主導による多施設共同第Ⅱ相臨床試験」1)の結果に基づき,オプジーボ®の適応拡大・薬事承認に至りました.効果が得られる確率は高くはないものの,今までになかった選択肢が生まれ,さらにはこの治療薬により治った患者さんが出てきていることの喜びは言葉にできません.これがゴールではありませんが,これまでの10年を振り返りつつ,私の意見を述べたいと思います.
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