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はじめに-医薬品開発について
医薬品の開発には,時間と膨大な資金が必要である.新規物質の探索・作成から始まり,物理化学的研究,各種薬効薬理の検討,動物実験による有効性,安全性の検討などを十分に行い,有効かつ安全であると思われる候補物質のみが臨床での検討段階,すなわち治験に進むことができる.
治験では,まず健常人(抗癌剤など特殊な薬物では当初から患者)を対象とした第I相試験を実施して,有効量と目される投与量の数倍量までの安全性を確認する.その後,第II相試験で有効量の探索を行い,第III相試験でその検証を行う.その他に特殊な患者群における安全性,長期投与が予定される薬剤では長期投与による安全性など,実地医療で使用される様々な状況に応じてデータが収集される.新規物質の作成から臨床試験実施前までに5~8年,臨床試験に3~7年がかかるといわれ,無事承認され市販される薬剤は,生成された新規物質の5,000~6,000分の1とさえいわれている1).当然,医薬品開発には膨大な資金が投入されるため,製薬企業は無事市販に至った薬剤で利潤を上げ,開発資金を回収し,次の医薬品開発を進めなければならない.自動車会社が新しい技術を搭載した新車を開発するように,電気機器メーカーが新しい端末を開発するように,製薬企業は新しい医薬品を開発する.それはボランティア行為ではなく,自社の存続と繁栄のためにも,また株主のためにも利潤を上げなければならない.しかし,そのために臨床現場が必要とする医薬品が開発されない場合が生じる.患者が非常に少数である疾患,既存の医薬品であって新たな効能・効果を追加しても薬価が安く利潤が出そうにない場合など,製薬会社に一任していると,いつまでたっても開発が進まないという事態が起こりえる.
厚生労働省は,こうした医薬品開発の停滞を解消するため,「適応外使用に係る医療用医薬品の取り扱いについて」(平成11年2月1日研第4号医薬審第104号)という通知を発出して,国内で広く適応外使用として使用されている医薬品に対しては治験を実施しなくても承認申請ができる道を用意するなどして,現場のニーズを満たすべく努力している.平成14年の薬事法改正において医師主導治験の実施が可能となったのも,この一連の流れに沿ったものと理解すべきであろう.つまり,医師主導治験は,製薬企業に全面的に依存せず,医師自身が臨床ニーズに合わせた治療法を獲得する手段の一つといえる.
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