皮膚病診療 42巻7号 (2020年7月)

特集 小児のアレルギー性皮膚疾患 最近のトレンド

Editor's eye 馬場 直子
  • 文献概要を表示

 小児のアレルギー疾患領域における近年の病態解明と,それに基づいた治療や対処法の進歩には目覚ましいものがある.以前は食物アレルギー(FA)とアトピー性皮膚炎(AD)の関係について,皮膚科医と小児科医の間に大きな見解の違いがあり,学会で喧々諤々の論争が繰り広げられていた.しかし近年,ADだけでなく,FAやその後に続く喘息,花粉症,アレルギー性鼻炎(NA)などのアレルギーマーチまでもが,経皮感作に始まるとの認識が標準的になりつつある.さらに治療法においても,対症療法だけでなく舌下免疫療法,経口免疫療法などのいわゆる減感作療法へと発展しつつある.

 ADは以前から,一様な経過をたどる疾患ではなくさまざまなフェノタイプがあるといわれてきたが,それを解明するためには生まれてくる子どもたちを長期間追跡する一般集団を対象とした前向き研究が不可欠である.今回は,わが国における出生コホート研究と諸外国のそれとを比較しながら展望していただいた.Topicsの1つでは治療法の進歩として,100年も前に提唱されていた舌下免疫療法が,近年,優れた標準化エキスの開発により,副作用の少ない有効な治療法として再び日の目を見ることになったことを取りあげた.現時点では花粉症とNAに対するスギ抗原とダニ抗原による舌下免疫療法だけであるが,今後はFAや喘息においても大きなポテンシャルを秘めているという.もう1つのTopicsでは,乳児期早期からの保湿剤を使ったバリア機能の改善と離乳食の早期開始によるその後のADやFAの予防効果に関して,国内外で行われている大規模なRCTのレビューをしていただいた.予防効果については肯定的なものと否定的なものがあるが,現在どこまでわかっているのかということと今後の課題について要約していただき,非常に興味深い.

  • 文献概要を表示

 乳児のアトピー性皮膚炎患者は食物アレルギーを合併していることが多い.アトピー素因のある乳児では,アトピー性皮膚炎の発症に引き続き,加齢とともに食物アレルギー,気管支喘息,アレルギー性鼻炎などを発症することがあり,これをアレルギーマーチと呼んでいる.そのメカニズムについて近年ではアトピー性皮膚炎などで皮膚バリア機能障害のある湿疹が食物抗原や環境抗原への感作の原因となり,他のアレルギー疾患が発症するという「経皮感作」が提唱されている.この経皮感作を防ぎ,アレルギーマーチの進展を阻止するにはどうすればよいであろうか? 本稿では初めに食物アレルギーについて概説し,その後アトピー性皮膚炎と食物アレルギーの関係について,経皮感作やアレルギーマーチの観点からアレルギー疾患の発症予防も含めて解説する.

(「はじめに」より)

  • 文献概要を表示

 1911年にNoonらが枯草熱に対する治療法として,世界で初めて皮下免疫療法(subcutaneous immunotherapy:SCIT)の効果を報告した1).筆者がレジデントの時代,SCITは「減感作療法」と呼ばれ,小児においても喘息やアレルギー性鼻炎の長期管理において,非常にポピュラーな治療法として実践されていた.しかしながら国内に治療用としての抗原製剤は存在せず,各医療機関においてハウスダストやスギ花粉の診断用抗原エキスを転用して治療を行っていた.そのためか筆者は,同治療の有効性を当時は十分に実感できなかった.このため,筆者はSCITから遠ざかったし,国内外のコンセンサスとしても喘息長期管理における位置づけは低位といえた.

 ところが1999年にスギの標準化エキス(トリイ)がわが国で使用可能となり,SCITが改めて評価されるに至った.世界的にもダニを含めた抗原の精製度が増して標準化されたことにより,小児の喘息やアレルギー性鼻炎に対する有効性を論述した論文が次々に報告され始めた.

(『I.吸入性抗原と舌下免疫療法』の「1.皮下免疫療法の効果と問題点」より)

  • 文献概要を表示

 小児アトピー性皮膚炎の経過は一様ではない.さまざまなフェノタイプが存在する.国立成育医療研究センターによる成育コホート研究から,小児アトピー性皮膚炎には長期経過からさまざまな経過をたどるフェノタイプが存在することが明らかとなった1).ここでは,成育コホートで明らかとなった小児アトピー性皮膚炎のフェノタイプとアトピー性皮膚炎に関連する因子,諸外国での小児アトピー性皮膚炎のフェノタイプについて概説する.

(「はじめに」より)

  • 文献概要を表示

・顔面全体の発赤と顕著な浮腫を伴う,デュアック®配合ゲル(クリンダマイシンリン酸エステル水和物/過酸化ベンゾイル,サンファーマ株式会社)によるアレルギー性接触皮膚炎の2例を経験した.

・パッチテストを施行し,原因成分は2症例とも過酸化ベンゾイルおよびクリンダマイシンリン酸エステルと同定した.

・過酸化ベンゾイルの外用によるケラチノサイトの障害でバリア機能が低下することで,経皮感作がおこりやすくなり,比較的短期間で接触皮膚炎を発症した可能性が考えられた.

(「症例のポイント」より)

  • 文献概要を表示

・マカダミアナッツオイル由来成分を含有した化粧品の使用でアナフィラキシーを呈した13歳女子例を経験した.

・化粧品等に食物由来成分が配合されている場合があり,食物アレルギー患者は十分注意する必要がある.

(「症例のポイント」より)

  • 文献概要を表示

・意識消失の既往がある,日光蕁麻疹の小児例を経験した.

・作用波長は可視光線で,UVA後照射が増強波長であった.

・光線照射テストで効果を確認した抗ヒスタミン薬と遮光指導で,経過は良好である.

・日光蕁麻疹は,増強波長によって症状が重症化することもあり,作用波長の検索とともに増強波長の有無を調べることは重要である.

(「症例のポイント」より)

  • 文献概要を表示

・未成年の慢性特発性蕁麻疹に対してオマリズマブを投与した3例を経験した.

・治療効果の指標にはurticaria activity score 7(UAS7)を用いた.

・すべての症例でUAS7による評価で症状の改善がみられた.

(「症例のポイント」より)

  • 文献概要を表示

・インフルエンザ罹患時に総合感冒薬に含まれるアセトアミノフェンによる急性汎発性発疹性膿疱症(acute generalized exanthematous pustulosis:AGEP)を発症した1例を経験した.

・自験例は,インフルエンザによる発熱に始まり,次いで敗血症や川崎病と類似した臨床経過をたどったため,診断確定に苦慮した.

・自験例は,急性期の総合感冒薬に対する薬剤リンパ球刺激試験(drug lymphocyte stimulation test:DLST)は陰性だったが,約1カ月後のアセトアミノフェンに対するDLSTは陽性だった.重症薬疹の原因薬剤に対するDLSTが陽性になりやすい時期は,臨床型により異なるため検査時期を考慮する必要があると思われた.

・AGEPは小児ではまれだが,本疾患に対する認知が重要である.

(「症例のポイント」より)

  • 文献概要を表示

・薬剤性過敏症症候群(DIHS)は,特定の薬剤を一定期間内服した後に生じる重症型薬疹である.われわれはカルバマゼピン(テグレトール®)内服開始32日目に皮疹を生じた10歳男児例を経験した.

・皮疹は両頰部,体幹,四肢の暗紅色紅斑で融合傾向が顕著であった.体温は38.3℃で頸部リンパ節腫脹と軽度の気分不良も伴っていた.

・血液検査では肝機能障害,初診7日後の異型リンパ球増加を認めたが,HHV-6抗体価の上昇は確認できず非典型薬剤性過敏症症候群(DIHS)と診断した.

・DIHSの小児例は極めて少ないが,報告例では自験例同様,原因薬剤内服開始から発症までの期間は成人とほぼ同様であった.他方,男児例が多い,川崎病の治療中や軽快後にみられる例があるといった特徴がみられた.

(「症例のポイント」より)

  • 文献概要を表示

・BCG接種後,結核疹が先行した後に生じた皮膚結核性肉芽腫を経験した.

・結核疹は1カ月半で自然軽快したが,皮膚結核性肉芽腫は3カ月間の経過観察中に徐々に増大し自壊したため,イソニアジド(INH)内服で加療を行った.

・本邦において,自験例以外にBCG接種後の副反応として同一症例に結核疹と真性皮膚結核が生じた報告はなかった.

(「症例のポイント」より)

  • 文献概要を表示

・乳幼児の露出部(手・顔・四肢)に境界明瞭で難治な湿疹を認める場合は,金属アレルギーを疑う.

・乳幼児での金属パッチテストは,ニッケル・コバルト・クロム・アルミニウム・スズの5種類で実施する.

・金属アレルギーが判明したら,金属製玩具・金属製食器(スプーン・フォーク・コップなど)の使用を中止する.できるだけ長袖・長ズボン(スパッツ)で四肢が露出しない服装にする.

(「症例のポイント」より)

  • 文献概要を表示

・ステロイド配合薬内服により医原性Cushing症候群を呈した9歳男児例を経験した.

・低身長とステロイド緑内障は,長期の治療を要した.

・剤型にかかわらず,ステロイド使用時には眼科との連携が必要である.

(「症例のポイント」より)

  • 文献概要を表示

・コントロール不良なアトピー性皮膚炎(AD)に合併した化膿性股関節炎を経験した.

・ドレナージ術と抗菌薬治療で後遺症を残さずに治癒した.

・入院中はステロイド塗布薬を使わないにもかかわらず,ADのコントロールは改善した.なんらかの外的要因がコントロール不良に関与していた可能性が考えられた.

・比較的まれな疾患であるが,ADに化膿性股関節炎の合併は留意すべきと思われた.

(「症例のポイント」より)

  • 文献概要を表示

・「脱ステロイド・脱保湿剤」による不適切な治療により著明な成長・発達障害,重度の低蛋白血症に至った乳児例を経験した.

・当院入院時の血清総蛋白値 3.0g/dL,アルブミン値 0.9g/dLであった.

・診療ガイドラインに基づいたステロイド外用を中心とした治療を行うことで劇的に改善した.

(「症例のポイント」より)

  • 文献概要を表示

・乳幼児期に発症した長期経過に及ぶアトピー性皮膚炎3症例に対し,デュピルマブ皮下注射を用いた.

・アレルギーマーチにより併存疾患の多い症例に対しても,EASI-75を達成し有効性が認められた.

(「症例のポイント」より)

  • 文献概要を表示

・ステロイド薬の外用・内服による二次性副腎機能不全を伴う難治性の11歳のアトピー性皮膚炎(atopic dermatitis:AD)患児に対し,シクロスポリン(CyA)内服が奏効した.

・ステロイド外用による治療の継続が副作用により困難な小児AD例にCyAは有効であり,今後小児ADに対するCyAの適応拡大が期待される.

(「症例のポイント」より)

Editorial

ゲノム医療 向井 秀樹

私の視点

知って得する最新情報

自己炎症性角化症 秋山 真志
  • 文献概要を表示

 自己炎症とは,遺伝的な要因により自然免疫系が必要以上に活性化しやすいことによってひきおこされる炎症のことである.自己炎症性疾患,あるいは自己炎症性症候群という疾患概念が,体質的に自然免疫系の過剰な活性化をおこしやすい人に発症する炎症性疾患について確立されている.自己炎症性疾患,自己炎症性症候群として,クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS),家族性地中海熱,TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS),化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ(PAPA)症候群など多数の疾患が知られている.

(「自己炎症とは?」より)

リレーエッセイ 私のワークライフバランス

仕事と家庭,両立のtips 中島 沙恵子

皮心伝心

カビを育てる 楠原 正洋

診察室の四季

さくらんぼ 斉藤 隆三

皮膚科のトリビア

第181回 浅井 俊弥

--------------------

目次

次号予告

基本情報

24340340.42.7.jpg
皮膚病診療
42巻7号 (2020年7月)
電子版ISSN:2434-0340 印刷版ISSN:0387-7531 協和企画

文献閲覧数ランキング(
6月22日~6月28日
)