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小児のアレルギー疾患領域における近年の病態解明と,それに基づいた治療や対処法の進歩には目覚ましいものがある.以前は食物アレルギー(FA)とアトピー性皮膚炎(AD)の関係について,皮膚科医と小児科医の間に大きな見解の違いがあり,学会で喧々諤々の論争が繰り広げられていた.しかし近年,ADだけでなく,FAやその後に続く喘息,花粉症,アレルギー性鼻炎(NA)などのアレルギーマーチまでもが,経皮感作に始まるとの認識が標準的になりつつある.さらに治療法においても,対症療法だけでなく舌下免疫療法,経口免疫療法などのいわゆる減感作療法へと発展しつつある.
ADは以前から,一様な経過をたどる疾患ではなくさまざまなフェノタイプがあるといわれてきたが,それを解明するためには生まれてくる子どもたちを長期間追跡する一般集団を対象とした前向き研究が不可欠である.今回は,わが国における出生コホート研究と諸外国のそれとを比較しながら展望していただいた.Topicsの1つでは治療法の進歩として,100年も前に提唱されていた舌下免疫療法が,近年,優れた標準化エキスの開発により,副作用の少ない有効な治療法として再び日の目を見ることになったことを取りあげた.現時点では花粉症とNAに対するスギ抗原とダニ抗原による舌下免疫療法だけであるが,今後はFAや喘息においても大きなポテンシャルを秘めているという.もう1つのTopicsでは,乳児期早期からの保湿剤を使ったバリア機能の改善と離乳食の早期開始によるその後のADやFAの予防効果に関して,国内外で行われている大規模なRCTのレビューをしていただいた.予防効果については肯定的なものと否定的なものがあるが,現在どこまでわかっているのかということと今後の課題について要約していただき,非常に興味深い.
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