呼吸器ジャーナル 73巻1号 (2025年2月発行)

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特集　あらためて考える—肺癌周術期治療　課題とこれから

序文

あらためて考える—肺癌周術期治療　課題とこれから釼持　広知 73巻1号 , 2025年2月 , pp.4-5

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　非小細胞肺癌のⅠ〜Ⅱ期とⅢ期の一部では，外科切除が治療の中心を担っている．周術期に薬物療法を追加することによる治療成績の向上が望まれ，2000年代には日本からUFT，海外からはシスプラチンを含む併用療法の，術後補助化学療法としての有効性が第Ⅲ相試験で示されてきた．これらの術後補助化学療法を行うことによる効果は限定的であり，さらなる治療開発が望まれてきた．しかし，新規抗がん剤は，進行または再発肺癌での開発が主体であり，周術期の開発がなかなか進んでこなかった．

　2020年以降になり，分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬を用いた術後補助化学療法の有効性が示された．さらには，術前治療においても免疫チェックポイント阻害薬＋プラチナ製剤を含む併用療法の有効性が示され，さらには術前および術後に免疫チェックポイント阻害薬を投与することでも，術前同様に有効性が示された．これに伴い，周術期薬物療法の期待は高まり，様々な議論が行われるようになっている．特に術前の免疫チェックポイント阻害薬の導入により，あらためて切除可能の定義について議論する機会も増えている．

Ⅰ．術前診断の重要性

術前の組織診断・リンパ節転移の診断桐田　圭輔 73巻1号 , 2025年2月 , pp.6-14

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POINT

●末梢肺病変の診断にはラジアル式超音波プローブ，仮想気管支鏡ナビゲーションの併用やクライオバイオプシーが有用である．

●術前のリンパ節生検はEBUS-TBNA（もしくはEUS-FNA）で行われるが，特に複数のリンパ節腫大に対して，転移の有無で治療方針が変わる場合には迅速細胞診が有用である．

術前の遺伝子検査・PD-L1検査高濱　隆幸 73巻1号 , 2025年2月 , pp.15-20

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●手術を検討している早期肺癌症例においては，バイオマーカー診断が必須となった．

●必要な3つのバイオマーカー（EGFR，ALK，PD-L1）が測定できるように提出する．

●バイオマーカー検査に耐えうる十分な量と質の検体採取が重要である．

Ⅱ．切除可能の定義

免疫チェックポイント阻害薬使用可能になる前の切除可能の定義坪川　典史 73巻1号 , 2025年2月 , pp.21-28

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●プラチナ製剤併用療法の周術期治療の効果は限定的で，再発リスクは高い．

●臨床病期Ⅲ期に対する切除可能の判断は，症例ごとに検討する必要がある．

●「手術により生存の延長が期待できるか」をポイントに判断していく．

免疫チェックポイント阻害薬使用可能になった現在の切除可能の定義小野寺　賢 , 野津田　泰嗣 , 岡田　克典 73巻1号 , 2025年2月 , pp.30-34

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POINT

●ICI補助療法の登場により，縦隔リンパ節を伴うNSCLCの手術成績が向上した．

●一部のⅣ期NSCLCでは，外科切除を含めた集学的治療が試みられている．

Ⅲ．局所治療の現在と今後

早期肺癌に対する外科治療の現在と今後小原　秀太 , 千葉　眞人 , 津谷　康大 73巻1号 , 2025年2月 , pp.35-41

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●近年の臨床試験より，縮小手術の適応が広がりつつある．

●ロボット支援下手術や単孔式胸腔鏡下手術などの低侵襲アプローチ法も普及している．

根治的胸部放射線治療原田　英幸 73巻1号 , 2025年2月 , pp.43-47

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●早期肺癌の放射線治療は，SBRTや粒子線治療により治癒が期待できる治療となった．

●局所進行肺癌の放射線治療は，薬物療法との併用により近年治療成績が向上している．

●局所進行肺癌の治療方針のMDTでの検討に，放射線治療医の関与が望まれる．

Ⅳ．白金製剤を用いた周術期治療

術前治療：白金製剤を用いた術前化学療法，化学放射線療法高持　一矢 73巻1号 , 2025年2月 , pp.49-55

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●ⅠB-Ⅱ期やN2を含まないⅢA期肺癌に対する標準治療は，手術（＋術後補助療法）である．今後，術前化学療法＋免疫療法と術後化学療法＋免疫療法を比較するRCTを行う必要がある．

●N2を含むⅢA期肺癌に対する術前治療の標準治療は，同時化学放射線療法である．今後，術前同時化学放射線療法と術前化学療法＋免疫療法を比較するRCTを行う必要がある．

術後治療：白金製剤，テガフール・ウラシル配合剤を用いた術後補助化学療法，放射線療法和久田　一茂 73巻1号 , 2025年2月 , pp.56-66

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●術後病理病期Ⅱ-ⅢB期の完全切除，非小細胞肺癌に対して，シスプラチン＋ビノレルビン併用療法による術後補助化学療法の有効性が示されている．

●病変全体径が＞2〜≦5cmの完全切除例では，テガフール・ウラシル配合剤による術後補助化学療法の有効性が示されている．

●完全切除，非小細胞肺癌に対する術後放射線療法の有効性は限定的である．

白金製剤を用いた術前治療後の手術水野　鉄也 , 芳川　豊史 73巻1号 , 2025年2月 , pp.67-71

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●白金製剤を用いた導入療法は，術後補助療法に比べてコンプライアンスが良好である．

●導入療法後の手術において，肺全摘の回避，患側肺の温存可能な状況がある．

●導入療法後の手術施行割合は80〜90%である．

Ⅴ．免疫チェックポイント阻害薬を用いた周術期治療

切除可能な非小細胞肺癌に対する術前治療における免疫チェックポイント阻害薬の有効性福田　祥大 , 濵田　顕 73巻1号 , 2025年2月 , pp.72-78

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●切除可能肺癌に対する免疫チェックポイント阻害薬を用いた術前療法，術前・術後療法の有効性が示され，標準治療の一つとなった．

●免疫チェックポイント阻害薬を術前療法のみに投与するのか，もしくは術前療法と術後療法ともに投与するのかについての是非は明らかとはなっていない．

●現在，さらなる肺癌周術期治療開発が進められており，今後，切除可能肺癌の予後の改善が一層期待される．

免疫チェックポイント阻害薬を用いた術後補助化学療法上垣内　篤 73巻1号 , 2025年2月 , pp.79-87

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●近年，肺癌の術後補助療法に免疫チェックポイント阻害薬が導入され，肺癌手術後の治療体系に大きな変革をもたらした．

●腫瘍のPD-L1発現ごとに有効性が異なることが示され，ガイドラインにも反映されている．

●免疫チェックポイント阻害薬に特有の免疫関連有害事象のマネージメントが重要である．

免疫チェックポイント阻害薬を用いた術前治療後の手術青景　圭樹 73巻1号 , 2025年2月 , pp.88-93

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●ICIの術前治療は，腫瘍縮小や手術成績向上を通じて，非小細胞肺癌の治療成績を改善する．

●術前治療後の手術に関する知識と手技の向上や，irAEへの対応を含めた周術期マネージメントが重要である．

●適切な患者選定基準の確立と，さらなる治療成績の向上を目指した新規治療法の開発が求められる．

術前と術後の免疫チェックポイント阻害薬の効果野村　幸太郎 73巻1号 , 2025年2月 , pp.94-100

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●術前ICIと術後ICIの効果を直接比較した臨床試験はない．

●術前と術後で腫瘍免疫応答はドラマティックに変化する．

●腫瘍量の変化やリンパ節郭清，手術侵襲は周術期ICIの治療効果に影響する．

Ⅵ．ドライバー遺伝子変異/転座を有する非小細胞肺癌の周術期治療

EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌に対する周術期治療藤本　一志 , 池田　慧 73巻1号 , 2025年2月 , pp.101-110

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●EGFR遺伝子変異陽性NSCLCに対する術後EGFR-TKI療法は，永らく術後補助療法の標準治療としての地位確立に至らなかった．

●ADAURA試験は，EGFR遺伝子変異陽性例における術後オシメルチニブ投与によりDFSのみならずOSも改善し，脳転移再発を減らした．

●術後のMRD検出の取扱いに関しては，今後さらなる知見の集積が望まれる．

ALK遺伝子転座を含む希少集団原武　直紀 , 小副川　敦 73巻1号 , 2025年2月 , pp.112-118

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●ALK遺伝子転座陽性非小細胞肺癌の術後補助療法にアレクチニブが有効性を示した．

●CNS転移抑制や安全性の高さが周術期治療の標準化に貢献した．

●その他の希少集団でも周術期治療の開発が進行中である．

Ⅶ．臨床現場で困る対象における周術期

高齢者に対する周術期治療の課題松原　太一 73巻1号 , 2025年2月 , pp.120-126

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POINT

●非小細胞肺癌の新たな周術期治療が出てきているが，高齢者へのエビデンスは不足している．

●術後のアテゾリズマブはプラチナ療法後，術後TKIはプラチナなしでも投与可能である．

●術前ICI併用化学療法は，有害事象の頻度が増加する可能性があり適応は慎重に判断が必要である．

小細胞肺癌を含む高悪性度神経内分泌肺癌の周術期治療勝又　信哉 73巻1号 , 2025年2月 , pp.127-131

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POINT

●肺神経内分泌癌は術後遠隔転移再発が多く，予後不良であり，手術成績は十分でない．

●実臨床では術後補助化学療法としてEP療法が標準治療として実施されることが多い．

●今後，免疫治療を含めた新たな周術期治療戦略の開発が望まれる．

Ⅷ．周術期におけるバイオマーカー

MRD (molecular residual disease) 坂井　和子 73巻1号 , 2025年2月 , pp.132-138

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POINT

●MRDは周術期治療における担癌状態を評価しうるバイオマーカーである．

●周術期治療のMRD検出による再発リスク予測および予後予測の有用性が示されている．

●肺癌の周術期におけるMRD検出には，偽陰性の課題が残る．

周術期治療のバイオマーカーにおける全ゲノム解析の可能性藤井　博之 , 角南　久仁子 73巻1号 , 2025年2月 , pp.140-148

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POINT

●WGSはCGPが苦手とする非翻訳領域の異常や複雑な構造異常も検出可能な検査である．

●WGSによる新たなバイオマーカーの同定や個別化医療の推進が期待されている．

●WGS医療実装に向けて“全ゲノム解析等実行計画2022”に基づく取り組みが進行中である．

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目次 73巻1号 , 2025年2月 , pp.2-3

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バックナンバーのご案内 73巻1号 , 2025年2月 , pp.150

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次号予告 73巻1号 , 2025年2月 , pp.151

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奥付 73巻1号 , 2025年2月 , pp.152

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基本情報

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73巻1号
(2025年2月発行)

電子版ISSN：2432-3276 印刷版ISSN：2432-3268 医学書院

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Ⅰ．術前診断の重要性

Ⅱ．切除可能の定義

Ⅲ．局所治療の現在と今後

Ⅳ．白金製剤を用いた周術期治療

Ⅴ．免疫チェックポイント阻害薬を用いた周術期治療

Ⅵ．ドライバー遺伝子変異/転座を有する非小細胞肺癌の周術期治療

Ⅶ．臨床現場で困る対象における周術期

Ⅷ．周術期におけるバイオマーカー

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