書評
「誰も教えてくれなかった「風邪」の診かた 重篤な疾患を見極める!」―岸田直樹●著
大曲 貴夫
1
1国立国際医療研究センター・国際感染症センター
pp.1076
発行日 2013年9月1日
Published Date 2013/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416101595
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研修医たちと接していると感じるのは,彼らが急性上気道炎(以下,本書に倣い「風邪」と表記する)の診かたを知らないということである。市中肺炎や腎盂腎炎,髄膜炎の診療は知っているのに,である。何とも不思議な状況であるが,無理もない。かわいそうなことに,医学教育の流れの中で,風邪を系統的に教わることはまずないのだ。こんなにありふれた疾患であるにもかかわらず,だ。
おそらく多くの医師は,風邪自体を「そんなことは当たり前」として,そもそも医療上の問題として捉えていないと思われる。いわば医療化されることのない,体調不良の一種として捉えていることがほとんどである。しかし当事者である患者が風邪による症状に対して,民間療法では対処不能として医療を求めはじめたとき,結果として施される診療の中身は,顔をしかめてしまうものが多い。
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