Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
てんかんの年齢別発症率は二峰性を呈し1),小児期と高齢期に発症率が高くなる。小児期はてんかんの好発時期であり,岡山県で行われた疫学研究によると,日本の13歳以下の小児てんかん有病率(/1,000)は5.32)と推定される。小児においててんかん発作が十分にコントロールされない状態は,発作による脳神経細胞への影響とともに心理的・精神的不安による日常生活や学業への支障をきたす。また,重積発作,危険な場所での意識消失発作,転倒発作などは時に生命に危険を及ぼすこともあり,小児期から適切な治療を開始することは重要である。
「小児てんかんの包括的治療ガイドライン」(日本てんかん学会)3)では,小児も成人と同様に抗てんかん薬による薬物治療が中心とされ,発作型に基づき適切な薬剤を選択するべきとしている。しかしながら,小児では小児特有の成長・発達,行動面や学業面への影響を配慮することが重要であり,行動や認知への好ましくない作用を持つ薬剤の使用は躊躇される。現状わが国で小児てんかん患者に使用可能な抗てんかん薬は限られており,小児てんかん治療の選択肢を増やすことは急務である。
レベチラセタム(LEV)は日本を含む90以上の国と地域で承認・発売されている,幅広い発作型に有効な抗てんかん薬である4)。LEVは前シナプス終末に存在する神経伝達物質の放出に関連した膜構成蛋白質のsynaptic vesicle protein 2A(SV2A)に親和性を示し,既存の抗てんかん薬には認められないSV2Aとの結合による神経伝達物質放出の調整を主たる作用機序とすると考えられている4)。LEVは欧米において,成人部分てんかんに対する単剤および併用療法に加え,特発性全般てんかんの強直間代発作およびミオクロニー発作に対する併用療法,さらに小児部分発作に対する併用療法の承認も取得しており,英国のてんかんの薬物治療ガイドライン(2012年改訂)では,小児においても併用療法で最初に試みる抗てんかん薬として位置づけられている5)。このような海外での状況に鑑み,新規抗てんかん薬を用いた薬物治療ガイドライン(日本てんかん学会)6)において,LEVは初発の成人/小児部分てんかん/混合てんかんに対する単剤療法,成人/小児難治部分てんかんに対する併用療法,強直間代発作ならびに若年ミオクロニーてんかんに対する併用療法で有効と評価されている。
N01223試験は,日本人小児部分てんかん患者を対象としたLEV併用療法の有効性,安全性および薬物動態7)を検討した臨床試験であり,有効性を検証する第1期ならびに長期投与時の安全性を検討する第2期で構成された。本試験では,新たに開発されたLEVのドライシロップ剤も合わせて使用された。本稿では本試験の第1期の結果からLEVの有効性および安全性について報告する。さらに,健康成人で実施されたLEVのドライシロップ剤と錠剤の生物学的同等性試験の結果についても追補として合わせて報告する。
Abstract
A multicenter, open-label, single-armed study (N01223) was conducted to evaluate efficacy and safety of levetiracetam (LEV) as an add-on therapy in Japanese pediatric patients with uncontrolled partial-onset seizures (POS). A total of 73 children aged 4-15 years (mean±SD=10.1±3.4 years) were enrolled in the study, which consisted of an 8-week baseline period and a 14-week treatment period, including a 4-week titration period. A historical placebo control from a pivotal overseas pediatric study in POS add-on therapy was used. A 16.3% median percent reduction from the baseline in POS was observed in this placebo control. Therefore, in the present study, this value (16.3%) was chosen as the predefined threshold for the lower limit of the 95% confident interval (95% CI) of the median percent reduction from the baseline for LEV. In the present study, the percentage reduction (95% CI) in POS during the treatment period was 43.21% (26.19-52.14%), indicating a beneficial impact of LEV. The incidences of treatment-emergent adverse events (TEAEs) and adverse drug reactions (ADRs) were 82.2% (60/73 cases) and 56.2% (41/73 cases), respectively. The most common TEAEs were somnolence, nasopharyngitis, upper respiratory tract infection, and pyrexia. Frequent ADRs (more than 3%) were somnolence and feeling jittery. No serious TEAE or death was reported during the study. Our results suggested that adjunctive therapy with LEV is clinically efficacious and well tolerated in Japanese children with uncontrolled POS.
(Received: March 4, 2013, Accepted: April 30, 2013)
Copyright © 2013, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.