助産雑誌 71巻12号 (2017年12月)

特集 周産期ボンディング障害を知っていますか?

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周産期ボンディングとは,母親(父親)の子どもに対する情緒的な絆のことを言い,アタッチメントとは相補的関係にあるものの,異なる概念です。欧米では1990年頃から研究・臨床での実践が行なわれてきましたが,近年になって日本においてもボンディングの概念が取り上げられるようになってきました。

子どもに対する愛情が湧かないといった事例で,ボンディングの観点から介入することが増えてきています。

周産期メンタルヘルスにおいて,ボンディング障害は産後うつと並ぶ極めて重要な課題と言えるでしょう。

本特集を通して,周産期ボンディングの基本的な知識・情報から,臨床での事例にどう対応していくのかまでを発展的に学んでいただければ幸いです。

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忘れられないお母さん

 ずいぶん前の出来事ですが,忘れられないお母さんがいました。出産後に,単身赴任している夫から電話での相談があり,妻が「子どもがかわいいと思えない」「悪魔ちゃんと呼ぼうかなあ」と言うので,2人きりにしておけないということでした。そこで,出産した病院を退院してから,産後ショートステイで期限いっぱいの2か月を過ごしてもらうことになりました。

 浮かない表情のお母さんでしたが,助産師といっしょに,できることを話し合いながら赤ちゃんとの時間を過ごしていきました。今日の気持ち,ありのままの気持ちをさえぎらずに聴くこと,助産師の見守りの中でできることを探していきました。物理的には離れていても,決して見放さない夫からの心のこもった支援もあり,2か月後に自宅に戻りました。

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周産期ボンディングおよびボンディング障害とは何かについて,基本的な情報をまとめていただきました。また,ボンディング障害の評価方法について,現在臨床で使用されているスケールの概要と,その使用方法を解説していただきます。

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周産期ボンディング障害の発生要因とメカニズム,そこから考えられるリスク要因などについて,最新の研究に基づく知見を示しながら,現在わかっていることを解説していただきました。

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ボンディング障害への一般的な予防方法や治療方法はまだ確立されていません。しかし,ハイリスク母児に対する介入の効果がいくつか報告されています。1つひとつのケースに合わせた丁寧な対応が必要で非常に手間はかかりますが,今後,実践・研究結果が積み重なっていくことで,救われる母児が増えていくでしょう。

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ボンディング障害の早期発見と介入は,母児の関係性の構築,児の安全の確保,養育環境の整備において重要です。「赤ちゃんへの気持ち質問票」はスクリーニングに有用ですが,その適切な実施のタイミングについては今後も引き続き検討が必要です。また,効果的な支援方法の開発も今後の課題であり,さらなる研究が望まれます。

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新生児虐待についての基本的な知識の解説とともに,研究データを交えながら周産期ボンディングとの関連をお示しいただきました。また,助産師が新生児虐待にどう介入すればいいのか,どう予防すればいいのかについても言及していただきます。

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ボンディングの問題によって出産後早期から母子分離をするほうが望ましいケースがあります。子どもを保護する際にはいくつかの選択肢がありますが,本稿では特別養子縁組制度(新生児委託)を利用した子どもの保護について,事例をとおして,支援の実際と縁組成立までの具体的な流れとともに学びを深めます。

連載 私たちの仕事場・23

武蔵野赤十字病院 周産期センター
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 武蔵野赤十字病院(以下,当院)は,三次救急医療施設,地域がん診療連携拠点病院,地域周産期母子医療センターなどの機能を有する地域中核病院です。当院の理念として「愛の病院」を実践するために,病む人への愛,同僚と職場への愛,地域住民と地域への愛,地球,自然,命への愛の4つの愛を掲げています。

 その理念を受け,当院周産期センター(以下,当センター)のミッションは「地域のニーズに応え,安全・安心なチーム医療を提供する」,ビジョンは「生きる力を育てる〜安心して産める場所の提供〜産む力・生まれる力・育てる力・育つ力を最大限に引き出す」となっています。私たちは,相手の力を引き出すために,相手のことをよく知り相手の立場になって何がいちばんよいかを考え寄り添うことを大切にかかわっています。総合病院であっても,妊娠期から分娩期,産褥期から育児期に継続して助産師がかかわることが私たちの目指すビジョンにつながっています。当院は武蔵野市にあり,創設から68年間近隣地域の母子医療を支えてきました。そしてこれからも地域の母子医療を支えていく使命があるのです。

連載 宝物,教えてください・23

学びの原点の教科書 春名 めぐみ
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 これまで使ってきた教科書の中で,唯一手元に残していたのが,この母性看護学と産科学の教科書です。ある時,祖母から「曾祖母は東京で産婆をしていて,芥川龍之介の子どもをとりあげたこともある人だったんだよ」という逸話を聞いてから,漠然と助産師に憧れて,看護の道に進みました。私にとって看護はあくまでも通過点のつもりでしたが,看護学,特にこの母性看護学との出会いは,生まれて初めて,「学ぶことは面白いことなんだ!」という気づきと感覚をもたらしてくれるものでした。

 今は曲がりなりにも教員として看護や助産を次世代の人たちに伝えていく立場にあります。こうして振り返ってみると,今の仕事の原点がこの緑のハードカバーの教科書にあるように思います。それが捨てずにもっていた理由なのかもしれません。

連載 ワタナベダイチ式! 両親学級のつくり方・18【最終回】

父親の自覚はいかに? 渡辺 大地
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はじめに

 1年半の連載という大役も,今号で最終回となりました。

 4000字×18か月……約7万字ということで,途中でネタが尽きたらどうしよう,という心配も当初ありましたが,いやいやどうして,両親学級にネタは尽きないですね(笑)。最終回なので,もう一度両親学級の初心に戻って,大きな視点で考えてみたいと思います。

 早速,読者の皆さんに質問です。こんなことを聞かれた経験はありませんか?

 父親の自覚は,いつ芽生えるのでしょうか?

 —いかがですか? 妊婦さんや,子育て中のお母さんから,または,もしかしたらパパのほうから「ボクはいつになったら父親の自覚が湧くんですか?」と聞かれたかもしれません。少なくとも私は,女性からしょっちゅうこの質問を受けます。皆さんなら何と答えますか?

 もちろん個人差があるので正解は出せませんが,質問に対して「個人差があるからなんとも……」では不親切ですよね。

 これをシェアできるのが両親学級です。

連載 未来の助産師を育てています わたしたちの教育現場・33

島根県立大学別科助産学専攻
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神々の集まる“縁結び”の地で学ぶ

 島根県立大学別科助産学専攻(以下,本学)の前身は,1982年に島根県における助産師養成を目的として設置された島根県立総合看護学院助産学科に遡ります。1998年には島根県立看護短期大学専攻科助産学専攻が開設されました。2012年度に島根県立大学看護学部を設置したことに伴い,2015年度より別科として教育を行なっています。

 縁結びの地にある出雲キャンパスでは,入学後に新入生歓迎バスツアーを行ない,出雲大社周辺の散策を行ない,地域の方と交流をもちます。そしてご祈祷で幸縁をいただき1年が始まります。

連載 りれー随筆・395

双子育て 瀬戸 和香子
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助産師として働き始めた頃,双子の妊婦さんを受け持った。その妊婦さんは初産で30週から管理入院をしており,双子の出産や育児への不安がとても強かった。私も新人助産師で双子のことはよくわからず,必死で勉強した。「無事に2人を出産できるかな?」「双子の授乳はどうすればよいの?」など質問は多くあり,わからないことは先輩助産師や主治医の先生に聞き,具体的に1つひとつイメージできるように一緒に考え,妊婦さんの不安を少しでも軽減できるようにかかわった。

 今の時代は双子だと帝王切開が多いが,その頃は経腟分娩で出産することも珍しくなく,その妊婦さんも経腟分娩を希望した。分娩に関しては何度もイメージトレーニングをし,担当助産師として立ち会わせていただいた。妊娠期間中から一緒に児の成長を見てきた分,2人の元気な赤ちゃんを見た時はとても感動し,泣いてしまったことを今でも覚えている。

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ガイドラインの導入にいたった背景

 2017年8月に「産前・産後サポート事業ガイドラインおよび産後ケア事業ガイドライン」(以下,本ガイドライン)が厚生労働省から発表された。本ガイドラインの意義をより深く理解するには,国全体の長期ビジョン,マクロ政策および厚生労働省の他のガイドラインとの関連でとらえることにより全体像が一層鮮明になると思われるので,この流れに沿って解説したい。

この本,いかがですか?

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倫理リスクへの対応力が高められる1冊

 2000年以後,医療の高度化・複雑化・科学化,患者の権利尊重,保健福祉への関心の高まり,情報公開の加速化,専門団体・学会の倫理に関する取り組み等に伴って,倫理教育も重要視されてきた。

 昨今では,日本助産評価機構で行なわれているクリニカルラダーレベルⅢの認定申請に必要なステップアップ研修の項目の1つとして,助産倫理の受講が必須とされている。このような中で「看護・助産倫理」についての論文やテキストも多く出されているが,なぜかわかりにくいという声を聞く。そこで,タイムリーにも本著が発刊された。

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BFF研究会とそのメンバー

 私たちBirth for the Future研究会(以下,BFF研究会)は,「出産ケア政策会議」研修会を主催し,2017年5月20日の第1回から月1回のペースで開催しています。BFF研究会は,女性や助産師の双方にとって課題の多い出産ケア環境を根本的に考え直さねばと2016年より月1回の会議を重ねてきました。そのメンバーとは,以下の3人です。

 古宇田(日本妊産婦支援協議会りんごの木代表)は,母親の立場から,助産師,産科医,新生児科医の学会や研修会,医療関係者や一般市民への講演会やシンポジウムを通して,女性にとっての出産体験の大切さを訴える活動を行なっています。彼女の活動の源には,ニュージーランド(NZ)で1980〜90年代の助産改革運動を牽引した助産師や女性への取材経験があります。

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 助産師の皆様こんにちは。神戸の中谷恭子と申します。私は現在,1523名の臨床心理士が所属している兵庫県臨床心理士会の副会長兼医療保健領域専門委員会委員長を拝命しています。普段は兵庫県内唯一の公立単科精神科病院の常勤心理士として,病院と地域を行き来しながら心理的援助を行なっています。

 2010年からは,縁あって助産学専攻の学生に乳幼児の発達や母子関係の育ちに関する講義を続けています。

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 第32回日本助産学会学術集会を,2018年3月にパシフィコ横浜で開催いたします。メインテーマは「母子と女性を守る助産の知と技,そして連携」です。安全や安心に配慮しながら女性の生涯を通じて健康を支援するために,われわれ助産師にできることは何かについて,参加者の皆様とともに追究していきたいと考えています。

 現在,わが国の少子化の進行は未だ止まらず,子どもの命の重みは増すばかりです。一方で,超高齢社会も進行の一途をたどっており,今後,女性の健康寿命をいかに延伸していくかは,わが国の大きな政策課題となっています。

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次号予告・編集後記

助産雑誌 第71巻 総目次

基本情報

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助産雑誌
71巻12号 (2017年12月)
電子版ISSN:1882-1421 印刷版ISSN:1347-8168 医学書院

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