日本看護医療学会雑誌 23巻2号 (2021年12月発行)

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Brief Report

Relationship of Thirst Distress and Thirst Coping with Self-management of Interdialytic Weight Gain in Patients Receiving Hemodialysis Treatment Masako OGAWA , Itoko TOBITA , Kazuma ISHIMATSU , Yoshimasa ORITA 23巻2号 , 2021年12月 , pp.1-9

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　Aim: This study aimed to investigate the interdialytic weight gain (IWG) and to examine the thirst distress, thirst intensity, and coping behaviors of patients receiving hemodialysis treatment in Japan.

　Methods: The design of this study was a cross-sectional study that used a questionnaire survey. The study was conducted with 173 patients receiving hemodialysis treatment at dialysis centers in Kyoto, Japan. The survey items included IWG, the Thirst Distress Scale, thirst intensity, and coping behaviors for thirst.

　Results: Thirty-eight patients were classified into the well-managed group (WMG) and 135 patients into the unwell-managed group (UMG), based on the upper limit for IWG by excess. There were no significant differences in the thirst distress between the WMG and the UMG. No significant difference was found in the variation of thirst intensity between intraday and interday in the WMG; however, significant differences were observed in the variation of thirst intensity between both intraday and interday in UMG. Significant biases were found “gargle” and “lick candy” to be the coping behaviors for thirst between the WMG and the UMG.

　Conclusions: The number of UMG patients was about 3.5 times as much as that of the WMG patients in this study. In the UMG, intraday thirst was remarkable before going to bed at night, and interday thirst was remarkable on the two non-dialysis days.

総説

医療系学生による医療専門用語の認知と理解とその教授法—文献調査酒井田　由紀 , 足立　円香 23巻2号 , 2021年12月 , pp.10-18

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I．緒言

　医療の対象者に対し分かりやすく説明する方法は現在もなお探求されているテーマであり、医療／医学用語の提供のあり方を研究した国立国語研究所「病院の言葉委員会」による病院の言葉を分かりやすくする提案（2009）が代表的である。これによると患者に言葉が伝わらない原因に「①患者に言葉が知られていないこと、②患者の理解が不確かであること、③患者に理解を妨げる心理的負担」があることが挙げられている。このうち「①患者に言葉が知られていないこと」に対処するには、説明者側により専門用語を対象者が理解できるような日常語で言い換え、平易化する力が求められる。すなわち、医療専門用語を分かりやすく説明するためには先ず、医療専門用語を正確に認知し、理解することが求められ、その次に誤解や誤用なく対象者に伝えるという二つの課題がある。医療従事者の全てを対象として示された診療情報の提供等に関する指針（平成30年7月20日，医政医発0720第2号）においてもインフォームド・コンセントの内容には実に多岐に渡る内容を患者の理解が得られるように説明することが求められており、これを実行できる能力の育成は重要な課題である。更には、症状や治療の説明の際に、十分に理解できない医療専門用語を用いることで患者に不安やストレスを与える可能性があることが明らかにされており（末本ら，2012；栗原ら，2013）、患者への説明の場を担う看護師には高い説明能力が求められる現代にある。

　一方、医学ならびに医療の専門知識を獲得する過程に在る医療系学生自身にとって、医療の対象者を意識しつつ分かりやすく説明する能力を獲得することは容易なことではない。診療場面におけるコミュニケーションの教育訓練のためのアプローチとしてKurtzとSilvermanが開発したCalgary-Cambridge guide─コミュニケーションプロセススキルがある。Calgary-Cambridge guide─コミュニケーションプロセススキルは9つの要素から構成されるスキルであり、そのうち『的確な想起と理解の補助』のプロセスには「分かりやすい言葉を使用する・専門用語は避ける」ことが挙げられている（Kurtz et al., 1996）。同様に、国内における看護教育においても看護基礎教育修了時の到達目標の一つに、実施する看護の根拠・目的・方法について、対象者の理解度を確認しながら説明する能力を備えることが期待されているものの（厚生労働省，2019）、説明能力を醸成するための医療系学生自身による医療専門用語の認知・理解の程度や現行のカリキュラムによる教授法は明らかでない。この文献調査では、医療専門用語に関する医療系学生の認知と理解を取り上げ、加えて、医療専門用語の教育で検討されている教授法について整理することを目的とした。

資料

高齢者専門病院で働く看護職の尊厳死に対する認識樋田　小百合 23巻2号 , 2021年12月 , pp.19-27

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要旨

　目的：高齢者専門病院で働く看護職の尊厳死に対する認識を明らかにする。

　方法：150床以下の高齢者専門病院2か所を対象に、看護職136名に対して質問紙調査を行った。

　結果：尊厳死に対して、「よくわからない」と回答した者は45名（33.1％）と最も多く、次いで「法制化が必要である」41名（30.1％）であった。尊厳死に対する認識として、【本人・家族の思いや希望を尊重した死】、【過剰な治療を控え苦痛が少ない安らかな死】、【その人らしさを大切にした尊厳ある死】、【現代の日本において実現が難しい死】の4つのカテゴリーが抽出された。

　考察：看護職は、尊厳死の実現を望んでいるが、終末期医療の在り方や尊厳死の定義など確立されていないことも多く、実現の困難性も認識していた。高齢者のエンド・オブ・ライフケア、つまり尊厳死の実現に向けての方策の一つには、アドバンス・ケア・プランニングやリビング・ウイルを推進していくことが示唆された。

訪問看護師と訪問介護員における在宅患者情報共有の促進要因河井　丈幸 , 榊原　久孝 23巻2号 , 2021年12月 , pp.28-36

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要旨

　目的：訪問看護師と訪問介護員の間での在宅患者情報の共有の促進要因を明らかにすることである。

　方法：在宅患者情報の共有状況等について無記名自記式質問紙調査を訪問看護・訪問介護事業所で働く看護職94名、介護職120名の合計214名の有効回答について分析した。

　結果：情報共有が不充分だと感じる割合は、看護・介護職ともに4割以上だった。情報共有を充分に行うための要因として、看護・介護職とも相手職種に「気軽に聞ける」ことが関連していた。さらに「気軽に聞ける」ことの関連要因は、両者とも「訪問看護・介護の併設事業所に所属」であり、看護職で「地域ケア会議」、介護職で「多職種研修会」への参加が関連していた。

　結論：地域包括ケアシステムにおいて、所属事業所が異なっている看護・介護職間のより良い情報共有には、お互いに「気軽に聞ける」良好な関係性が重要であり、そのためには顔を合わせる「地域ケア会議」や「多職種研修会」などへの参加が有効であることが示唆された。

在宅で生活する認知症高齢者の家族介護者が認知症診断時と認知症診断後に抱いた心情伊地田　妙香 , 渕田　英津子 23巻2号 , 2021年12月 , pp.37-48

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要旨

　在宅で生活する認知症高齢者の家族介護者が認知症診断時と診断後に抱いた心情を明らかにするため、家族サロンまたは認知症カフェに参加している家族介護者6名に半構造化インタビューを実施した。その後、逐語から家族介護者の心情をコードとして抽出し、認知症の診断時と診断後に分類し、それらを類似性によりカテゴリ化した。なお、診断後の心情は、コードを肯定的・否定的な心情に分類をした後にカテゴリ化を実施した。結果、認知症診断時、家族介護者は混乱や葛藤をした後、認知症の診断を受容していた。そして、将来への不安を抱きながらも、介護する上での希望を発見していた。認知症診断後、家族介護者は肯定的な心情として、認知症高齢者が快活である幸せ、認知症高齢者を受容、介護者役割を獲得、自分の安息を切望、認知症高齢者との共生を希望、介護を継続する意欲、周囲の支援の大切さを抱いていた。一方、否定的な心情として、認知症高齢者と意思疎通をする困難さ、日常生活での心労、言動への憤り、狼狽、拘束感、孤立感、介護継続への危機感を抱いていた。

基本情報

日本看護医療学会雑誌
23巻2号
(2021年12月発行)

電子版ISSN：2760-2079 印刷版ISSN：1345-2606 日本看護医療学会

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